第26話

ふう、と大きなため息が聞こえた。

ああ、やっぱり。

今回もだめだったみたいだ。

ギフトを暴走させた人のことなんて、信じてもらえな――……


「そうだと思った」


和らいだ声が降ってきて、私はゆっくりと顔を上げた。


「優しい晴がそんなことするはずないって思ってた。ねえ?」


よっしーは隣にいたサナエちゃんに話を振った。

サナエちゃんは神妙な顔つきで腕を組んで、うんうんと頷いている。


「そうそう。晴ってばいっつも人の心配ばっかりして、自分のことは後回しなんだもん」


「わざとなんかありえないって」


ねー、と2人は声を合わせた。


「……えっと」


「もー! 晴ちゃん、心配したんだよ!?」


そう言って駆け寄ってきたのはミズキちゃんだ。


「入院中だし、負担になるから連絡するなって宮っちに言われて、晴ちゃんからも連絡ないし、ずっとどうしてるか気になってたんだから!」


「そ……そうなの?」


「そうだよ!」


ミズキちゃんは私の両手を取って、ぎゅうっと握った。


「晴ちゃんは優しい人だってみんな知ってる。だってね、晴ちゃんがギフトを使うとき、治してくれたところがぽかぽかあったかくなるの。それってきっと晴ちゃんがあったかい人だからだよ」


ミズキちゃんは表情をくるくる変えながら私の両手を揺さぶった。


「それにね」


ミズキちゃんは恥ずかしそうに上目使いで囁いた。


「私の食べ物の好み、笑わないでいてくれるの晴ちゃんだけだった」


私は目を見開いた。

ミズキちゃんはえへへ、と照れたように笑っている。


「なあ! 河谷!」


ひときわ大きい声を出したのはヤスくんだ。


「河谷のもう一つのギフトってどんなの?」


来た、と思った。

その問いはいつか来ると思っていた。

私は入院中にカウンセラーさんと話し合った方法を披露することにした。

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