第25話
校門をくぐり、靴を履き替え、少し歩いて教室の前に辿り着く。
中はざわざわと騒がしい。
ほんの少し前までの日常が、いまはすごく遠く思えた。
私は可能な限り大きく息を吸って、ゆっくりと口から吐いた。
大丈夫。
私ならできる。
がらり。
私は勢いよく戸を開けた。
「おっ……おはよう!」
私が叫ぶように言うと、一気に注目が私に向いて、ざわめいていた教室がシン、と静まり返った。
きゅ、と唇を噛む。
こうなるのは覚悟していた。
私はそれだけのことをしでかした。
やってしまったことは変えられない。
でも、やり直しをするなら今なんだ。
「ねえ」
響き渡った声にびく、と体が震えた。
サナエちゃんと話していたよっしーがおもむろに立ち上がり、私を向いた。
「晴が子供を襲って怪我させたって本当?」
「!」
ひゅっと喉が鳴る。
恐れていたことが起きてしまった。
事実がねじ曲げられている。
伝言ゲームというのはどこかでおかしくなるものだけど、そんなふうに広まっていたなんて。
心配そうに私を見ていた陸くんが、反論しようと立ち上がりかけたのが目の端に見えた。
「違うよ」
私はよっしーの目を見てはっきりと答えた。
陸くんは動きを止める。
「男の子が川に落ちそうになって、ギフトを使って助けたの。……結果的に、怪我はさせてしまったけど……」
最期は俯いて尻すぼみになってしまった。
怖くて私はよっしーを直視できない。
握りしめた拳が震えている。
そんなの言い訳だって言われたらどうしよう。
嘘つきだって言われたら。
気持ち悪いとか、怖いとか言われたら。
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