第五章

第24話

翌朝、私は意を決して玄関を出た。


心臓が口から飛び出そうなほどどきどきしている。

息が苦しい。

気付けば呼吸が浅くなっている。


大丈夫。

大丈夫。

私はひとりじゃない。


何度も何度も、おまじないのように同じ言葉を反芻した。


意識して深呼吸を繰り返す。

するとほんの少し落ち着いて、止まりかけた足がまた進む。


北からの向かい風がぴゅうぴゅう吹いて、マフラーを巻いた私の体を冷やしていく。

指先が冷たい。

頬も、鼻の頭もきっと赤い。

だけど、私は抗うように前に進んだ。


今日のことは何度も頭の中でシミュレーションした。

何か言われたらちゃんと説明しよう。

違うことは違うと言おう。

もし悪い噂が立って一人になっても、分かってくれる人はいるのだから。

だから絶対、大丈夫。


私は言い聞かせて、大げさなくらい大股で歩いて体を暖めた。

ずんずんと道行く人を追い抜いていく。

すれ違う人の視線が気になったけど、このくらいの強気のほうが、きっといまの私には合っている。

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