第23話

お昼になったのを機に、彼は学校へ行き、私は家へ帰った。

パソコンで調べ物をして、夕方、仕事から帰ったお母さんを玄関で出迎えるなり、私は宣言した。


「私、明日から学校行く」


お母さんは特別驚かなくて、代わりにまるで慈しむように微笑んでくれた。


「そう。よく決めたね」


お母さんは鞄と持っていた買い物袋を床に置くと、私の前に立つなりそうっと包み込んだ。


「大丈夫、晴ならできる」


ぽんぽん、と私の背中を叩いた。

まるで子供みたいに。

安心する。

私は落ち着いた声でうん、と答えた。


「ありがとう、お母さん」


大丈夫だ、と思える。

私はひとりじゃない。

陸くんも、お母さんも、お父さんだってついている。

私の味方は、「河谷晴」を見てくれる人は、この世の中にちゃんと存在している。


迷ったときは正しいと思うほうへ。

いつもお母さんが言っている言葉だ。

私はそれをやってみせる。

人生は何度だってやり直せるんだって、証明してみせる。


お母さんはようやく満足したように私から離れると、頭をひと撫でして荷物を持って台所に入っていった。

お母さんは袋の中身を冷蔵庫に移しながら、そうだ、と振り返る。


「明日のお弁当、何がいい?」


何でも作るわよ、とガッツポーズを作って張り切っている。


「ハンバーグ!」


私が大好きなメニューをリクエストすると、分かりました、とお母さんは嬉しそうにまた笑った。

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