第19話
――ピンポーン
家のチャイムが鳴った。
今は平日の午前中で、家には私しかいない。
宅配便は頼んでいないし、セールスか、何かの勧誘だろうか。
断るのも面倒なので、私は居留守を使うことにする。
――ピンポーン
少し置いて、2回目が鳴った。
もしかしたらそれなりに用事のある人かもしれない。
でも今は出る気力がない。
私は布団に潜り込んだ。
――ピンポーン
……しつこい。
いないって言ってるんだから、さっさと諦めればいいのに。
私はますます布団を被って、聞こえないふりをする。
――ピンポーン
「晴、いるんだろ」
インターホンから聞こえた声にはっとする。
知っている。
だって、この声は。
私はがばりと布団から飛び起きて、足をもつれさせながら全速力で玄関に向かう。
カメラは見なくても分かる。
私ががちゃり、とドアを開けると。
「やっぱりいるじゃん」
「……陸くん」
いつもの無表情の陸くんが立っていた。
「なんで……」
「住所なら晴と同じ中学のやつに聞いた」
「や、ていうか学校」
「サボった」
「サボっ……!?」
「ギフトの検査ってことにしといたから大丈夫」
陸くんは飄々と言ってのけた。
真面目な彼が、皆勤賞の彼が、何よりギフトのことを隠していたはずの彼が、まさかこんな強引な手段を使うなんて。
私が呆気にとられていると、陸くんはずい、と手に持っていた何かを私の胸元に押し付けた。
古びた革の感触と、染み付いた汗と土の匂い。
「キャッチボールしよう」
くたくたになるほど使い古した野球のグローブ。
陸くんは私を外へ連れ出した。
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