第四章

第18話

自室のベッドで寝転がっていると、黄色く色付いたイチョウの木が窓の外に見えた。


風が吹くと葉っぱが1枚、2枚と飛んでいき、そういえば昔読んだ童話で、病気の主人公が窓から見える葉っぱが全て落ちる頃に自分は死ぬ、って予言した話があったなあと思い出した。


あの主人公は結局死ななかったし、このイチョウの葉が全部落ちても私は死なないけれど、このままこうしていたら進路どころか卒業も危ういと自覚している。


あの事件のあと、警察の取り調べで私が故意に子供に怪我をさせたわけではないと納得してもらえた。

たぶん陸くんが証言してくれたんだと思う。

だけど新聞に載るほどの大ごとにしてしまったのは事実なので、私は何日か専門病院に入院し、カウンセラーによるケアを受けた。


そのおかげで本来の落ち着きを取り戻した私は、週1回の定期検査を条件に退院の許可が下り、学校にも戻って良いとの判断が下された。


けれど、私はなんとなく学校に行けなかった。

事件のことはもちろん学校にも連絡がいっている。

もともとギフトの受け入れを積極的に行っていた学校側は、学校生活に支障がないなら今まで通り登校してくれて構わない、との見解を示してくれた。


だけど。

でも。


「またひとりぼっちかあ……」


私が学校を休み始めて、友達の誰からも連絡が来なかった。

仲良しだと思っていたマコちゃんさえもだ。


もしかしたら、優しいマコちゃんのことだから、デリケートな問題だと思って気を使ってくれたのかもしれない。

私から連絡をしたら、意外とあっけらかんと返事が返ってくるのかも。


けど、そんな勇気はなかった。

あのときの母親たちの怯えた表情を思い出す。

怖がられて当然だ。

普通なら関わりたくないと思うはず。

これ以上拒絶されたら、今度こそ力をコントロールできる自信がない。


鳴らないスマホは机の上に置きっぱなしだ。

私はベッドの上でごろりと体を回転させる。

見慣れた天井。

見慣れた壁紙。

あと何日、私はこうしているつもりだろう。

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