第17話
「晴!!しっかりしろ!!」
気が付くと、私は大声で叫ぶ陸くんに両肩を掴まれて揺さぶられていた。
「り、く、くん……?」
我に返ると、耳の周りにあった轟音が止んだ。
よく見ると陸くんも私もずぶ濡れで、辺りは大雨のあとのように水浸しだ。
打ち上げられた魚たちが河川敷の上でびちびちと跳ねている。
河底にあったであろう水草が街路樹のあちこちに絡まって、泥の混じった水の匂いがする。
遠くで響くサイレンの音。
少しずつ近付いてくる。
さっきまで私を糾弾していた女の人たちは泣き止まない子供たちを抱きしめながら身を寄せ合って、まるで本当に化け物を見るみたいな目で私を見て震えていた。
橋や土手の上には人だかりができている。
やがて見え始めたパトカーと救急車の赤色灯。
その光景を見てやっと分かった。
ああ、やってしまったんだ、と。
「……ごめんね、陸くん。巻き込んじゃった」
私は冷えた手で肩に添えられた陸くんの手をそっと外した。
パトカーの音がすぐ側で止まる。
警察の人たちが到着したみたいだ。
「でもね、私、それでも信じたい」
続いて救急車も到着した。
怪我人は、と救急隊の人たちが担架を持って河川敷に下りてくる。
「それでも、私にしかできないことがあるって信じたい」
私には警察の人が近付いてくる。
陸くんとの間に割って入り、署で話を、と言って私の腕を取った。
私は力なく頷いて土手を上る。
ふと救急車のほうを向いた。
良かった、さっきの男の子は無事搬送されたみたいだ。
私がパトカーに乗ると、追ってきた陸くんは叫んだ。
「晴!」
私は彼を振り返る。
陸くんは一瞬口ごもったあと、懸命に何か叫んだ。
けれどそれは私に届く前に、発車したパトカーのサイレンの音にかき消された。
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