第三章
第12話
土手に座り込んでしまった陸くんのところへ私も下りていった。
私が隣に来ても陸くんは微動だにせず、たゆたう水面を無言で見つめている。
彼の隣に私も座って、彼の視線と同じ方向に目を向ける。
大きな川に夕日がキラキラと輝いている。
絶えず流れる水の音。
子どもたちのはしゃぐ声。
遊歩道をランナーが軽快に駆けていく。
橋を渡る、たくさんの車のエンジン音。
景色のぜんぶが、私たちを通りすぎていく。
憧れていた陸くんと、夕暮れの川原で二人っきり。
状況だけ見れば、これ以上ないロマンチックなシチュエーションだ。
でも陸くんは私の隣ですっかり黙ってしまって、青春真っ盛り、感傷的な風景に似つかわしくなく、私たちの間には重苦しい空気が漂っている。
沈黙が辛い。
ものすごく辛い。
正直、何も話さずに帰りたい。
でも無言で立ち去るなんてできなかった。
なんだか、彼から逃げてしまうみたいで。
彼を本当にひとりぼっちにしてしまうみたいで。
だけどずっとこうしているわけにもいかないし、なにか話さなければ、と私は懸命に頭を働かせた。
「わ、私、知らなかったよ。陸くんがギフトを持ってるなんて」
って、違――――――――う!
そうじゃなくて!!
こんなド直球で突っ込むつもりじゃなかった。
きっと陸くんはギフトを持っていることを誰にも知られたくなかったはずで。
できれば触れないでいてほしかったことを、こんなにはっきり。
「……」
ほらやっぱり!
陸くん、黙ったまま話してこない!
「ぎっ……ギフトの検査に行ってるところも見たことないし、学校も皆勤賞だし、さすが陸くん! なーんて……」
あはは、と苦し紛れに愛想笑いをするも、隣の彼はやっぱり無言で無表情だ。
……無理。
私にこの空気を和ませるのは無理。
せめてマコちゃんがいたら、自然にふっと気の抜けるようなことを言えるんだけどなあ――。
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