第6話
家に帰ってすぐパソコンを開いた。
とりあえず適当な大学名をいくつか入力して、学部と学科、その特色や在校生のインタビューなんかを読んでいく。
ほんの数校、ざっと調べただけでも法学部、教育学部、農学部、工学部、医学部――他にも世の中にはいろんな学問があって、それらを教えてくれる機関がちゃんと存在していることに感服する。
その中から自分はどれを選ぶのか。
単に学びたいことだけじゃなくて、将来どんな仕事をしたいとか、目標とか、もちろん成績だって関係あるし、あとは学費とか――……。
「みんなどうやって決めてるんだろー……」
流し読みしながら画面をスクロールしていく。
クラスメイトのみんなは志望校はともかく、希望の学部くらいは決まっている人がほとんどで、自分みたいに何も決めずにふらふらしている人は珍しい。
ざっくりと人のためになることをしたいとは思うものの、人に教えることは苦手だから学校の先生は無理だろうし、お医者さんになれるような頭の良さもない。
法律で人を守るような責任の重い仕事も無理だと思うし、料理も下手だから栄養士も難しそうだ。
絵も描けないし、楽器も弾けないし、こんな私を受け入れてくれる大学があるのか、だんだん不安になってくる。
つくづく、自分はギフト以外に何もないんだなあと痛感する。
ギフトを専門的に学ぶにはそれなりの学力が必要で、そこまでしてギフトを知り尽くしたいかと言われるとそうでもない。
ただ、人にはない能力を持って生まれたからには、私にしかできない何かがあるんだろうな、とは思っている。
でもそれが何なのか自分じゃ分からないし、せめて陸くんくらい頭が良くて、偏差値の高い大学に行けたら何にだってなれたかもしれないのに。
そういえば、陸くんは知り合いのいないところに行くって言っていたけど、彼がそこまで人を遠ざけるのには何か理由があるんだろうか。
たとえば地元にすごく嫌いな人がいるとか。
逆に好きな人が遠くにいるとか。
もしくはその両方、とか。
「……」
あ、なんかすごく悲しくなってきた。
ネガティブの波に飲まれそうになり、私はふるふると頭を振って思考を止めた。
結局、進路調査票には、近場の大学名と成績的に無理のなさそうな学科名を書いて出すことに決めた。
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