第472話
家に到着すると買った商品を冷蔵庫に詰め込む。
これぞ我が家の冷蔵庫って感じになった。
でも、同じ商品が何個も入っているわけではないからどこかスッキリな感じもする。
「寒かったでしょ?はい、ココアね」
お父さんはテーブルにココアを2つ置く。
私を1つをもらいゆっくり飲む。
「このココアいつものと違う」
「気づいた?これね、仕事仲間からもらったんだ。普通のココアよりまろやかで美味しいって。ちょっと大人の味だけど」
確かに、ちょっと苦味があるココアかもしれない。
でも後味が残るようなものじゃない。
「え〜、なんか逃げられるんだけど。今の俺が冷たいからか?撫で撫でさせてくれよ。遊んでやるからさ」
亜紀はテレビの後ろに隠れてしまったケイをどうにか出そうとしている。
だが、そうなってしまっては暫く出て来ないだろう。
「亜紀君、うちの猫を虐めないでくれる?ストーブの前で寛いでいるところを邪魔されたら嫌がるでしょ」
「俺は運動をさせてやろうと思ったんだ。太っちょ猫君だぞ。食べ過ぎだ」
「前より痩せたよ。麻矢もおやつを与えるの我慢してるから。今は凛しかおやつ与えてない」
「もっと痩せろ。うちの猫はスマートだ」
丸っこくてごめんなさい。
でも、お父さんの言う通り痩せた。
標準体重より重いけど。
おやつが食べたくて鳴くけど、そこは心を痛めながら我慢してる。
ケイのためだし、飼い主がちゃんと管理しなくちゃダメだ。
「まぁ良いから。ココアが冷めるよ」
「お〜、ありがとう。そうだ、柚月の部下に会ったぞ」
「へ〜ぇ………えっ?会ったの?」
流れるような報告にお父さんも少々戸惑ったみたいだ。
「うまっ!これ美味いな。ちょい苦味があるけど。この苦味は嫌いじゃない。会ったぞ。年末の休みを満喫するぜって格好でスーパーにいた。あっちも年末だからゆっくりまったり……にはならんか。久々の休みなんじゃね?クソ忙しいらしいじゃん。あっち」
「部下って奏多のことだよね?」
「そうだな」
「会ったなら亜紀君のことも知らせるだろうね」
「だな」
「落ち着いてるね」
「俺が優勢!もう一杯くれ」
「はいはい」
飲むの早いな。
熱いのに。
お父さんは空になったコップを受け取りキッチンに行く。
「お母さんはどこ?さっきから姿が見えないけど」
「ご近所さんのところに行ったよ」
「近所?」
「そう。なんか、さつま芋を頂いたからお返しをしに行った」
「さつま芋?」
「今、蒸してるから待っててね」
通りでさっきから甘い香りがすると思った。
「亜紀君にもさつま芋あげるね。家に持って帰って。親御さんにあげてね。たくさんもらったからさ」
「さつま芋?あぁ、分かった。ありがとー。喜ぶ。蒸すことができるか分からんけど」
「レンジでチンでもいいから。蒸し器なんてない家庭もあるでしょ。で、今日は茶碗蒸しだよ。蒸し器出したついでに。茶碗蒸しは簡単だし」
正月に食べるんじゃないの?
それか、正月の分はちゃんとあるとか?
「ただいま〜。ふ〜、寒かったぁ。今夜も冷えるよねぇ。体の芯まで冷えちゃったよ」
お母さんは帰ってすぐストーブの前に座り手を突き出す。
よく見ると薄着のままで外に出たらしい。
なんで?
こんなに寒いのに上着を着ないで外に出たのか。
「だから言ったじゃん。ダウン着なって言ったじゃん。少しだけって言いながら10分は外にいたよ」
「だって、話が盛り上がっちゃって。息子さんが勉強しないって、家庭教師でもやってみようかなって。凛の場合はどうだったの?って聞かれたの。塾とか行かせてた?って」
「ふ〜ん。塾ね………………凛は自力でやったから参考にならないと思うけど」
「そうなんだけどさ。娘さんのやる気をどうやって出したのか!?って聞かれたの」
「で?」
「娘に聞いてみるって言って帰ってきた」
「………………」
あぁ、途中で面倒になって逃げてきたのね。
根掘り葉掘り聞かれるのって嫌だよね。
「さつま芋出来たよ。食べな」
「わーい!熱々さつま芋じゃん」
最初に飛びついたのはお母さんだ。
アルミホイルに包んで持ちソファーの上で食べ出す。
私も一本もらい食べる。
この時間に食べたら夕飯が食べられなくなると分かっているが食べたくなる。
それに、お父さんが食べなって言うから………………
うん、甘くて美味い。
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