第471話

どのお店も混んでおり年末の駆け込み購入状態だ。


そんな中、亜紀は活躍している。


特売セールの時間になると、人混みの中に入り込み商品をゲットしてくるのだ。


押せ押せ状態でも引かないのが亜紀である。


そうしてゲットしたお肉の塊。


金額を見るといいお値段。


これで特売セールですか?


お店を回っているけど、段々と買う金額も多くなっている。


豪勢な料理になりそう。



「最後はビールだっけ?」



「ここのお店のビールね。箱を2つ」



「また誰か呼ぶのか?」



「いつもの方々」



お酒売り場に行きケース2つをカートに載せる。


これで終了だね。



「あっ、ここで会うとは思わなかったなぁ。えっ?何々?2人でお買い物?………………いや、そんなことよりアメリカにいる奴が日本にいるよね。幻?生き霊?」



片手にカゴを持ち、その中はビールとおつまみ。


そして、休みなのか部屋着のような服装。


年末だからってそれでいいの?


完全に仕事中じゃない奏多がニコニコ笑顔でこちらに来た。



「うわぁ、会いたくない奴がいるし。お前、柚月の野郎には黙っててくれない?お菓子やるから」



「子供じゃないからね、俺。壱夜さんにはしっかり報告するよ」



「なんだ?女が欲しいのか?しょうがないなぁ。そういう店を紹介してやるよ。金髪エプロンに聞けば教えてくれそうだし」



「そんなお店に興味ないから。何?なんで壱夜さんと同じこと言うの?俺ってそんな目で見られているわけ?」



「ゲッ!アイツと同じこと言ったのか!?最悪。責任取れよ」



「いや、何言ってるのか理解できない。というか、休み中に仕事したくないよ。そっちが責任取ってくれない?休みなんだよ、休み。久しぶりの休みで家で年末を過ごそうって思っていたのにさぁ。休みじゃなくなったじゃん」



いや、それは私たちにも理解できない。


ここで会ったのは偶然だし。


探して会ったわけじゃないのに、休みがなくなった責任を取れって言われても。



「報告しなきゃ休みだろ、それ」



「………………あぁ、確かに」



えっ?


納得してる。


休みを優先した?



「よし、解決だな。ゆっくり休め」



「………………」



奏多は頭を捻り考える素振りをして横に振る。



「普通に無理。解決しない。何があるか分からないし。俺じゃない奴が見かけて報告するかもしれない。んで、何やってんの?って怒られるじゃん。休み中とか関係ないからね。休みでも休みじゃない〜って。そういうところでしょ。え〜、行くのかぁ。いやだなぁ。もうこのまま行こうかなぁ。休みだし、服装なんてもうなんでもいいよ。近所のお兄さんが休みだから幼馴染の家に遊びに来ました風で」



ブツブツ言いながら奏多は行ってしまった。



「アイツ、変わってるな」



「それ、亜紀に言われたくないと思うよ。ほら、レジに行こう。買った食材を待ち望んでるから



「だな」



柚月に報告されたところで乗り込んでくるわけじゃないし。


まぁ、何も言わないってことが問題なんだろうな。


また行列のレジに並び会計を済ます。


車に荷物を入れ込み、お父さんから貰った買い物メモを確認する。



「しっかし、めちゃくちゃ買ったなぁ。ビール以外にもワインやら日本酒やら。宴会レベルだぞ」



「新年会も考えてると思う。うちの冷蔵庫、パンパンになりつつある。でも、お母さんとは違う。同じ物を大量買ったりしないから」



年末年始の料理はお父さんが担当するらしい。


お母さんはお手伝い程度。


よし、全部ちゃんとあるね。



「全部ちゃんとあるから帰ろう」



「どっか寄らないか?」



「ダメ。冷凍もあるんだから」



「真面目ちゃん」



うるさい。


おつかい中の時は帰らないと、何やってたの?って聞かれるから。



「あまりあちこち行くと会うかもしれないよ」



「よし!帰ろう!」



亜紀は急いで車に乗り込む。


うん、凄く会いたくないってことね。


私も車に乗り込むと亜紀はすぐ発進させた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る