第470話

年末なのでスーパーは大変混み合っている。


カゴいっぱいに買い込みをしている人が目立つなぁ。


これ1件目なんだよね。


お母さんがバサっと私に渡したのは赤丸が付けられた広告だ。


どれも安いものだけにチェックが入っている。



「このお店は何を買うんだ?」



「かまぼこ。このお店が安い」



「へ〜ぇ。これ、他の店もこんな感じか?」



「そうだと思う。年末だからね」



お昼ご飯どうしようかな。


温かい料理がいいよね。


ラーメン………いいなぁ。



「今日のお昼はラーメンにしない?なんか食べたくなった」



「いいぞ」



かまぼこ売り場に行くと大量のかまぼこが積み重なっていた。


お一人様2個までって書いてある。


2個あれば十分だ。


かまぼこをカゴの中に入れてそのままレジに向かう。


お客さんがいっぱいいるということはレジも行列だろうなと思っていたけど、まさか商品売り場のところまで並んでいるとは思わなかった。



「凄い並んでるじゃん」


「だね。かまぼこ2個でこれに並ぶのかよ」



………………。


分かるよ。


カゴいっぱいに入れたお客さんが並んでいるからね。


1人どのくらい掛かるだろうか。



「おせちは買うもんだろ。俺の家は買うこともしないけどな」



「まぁ、おせちを作る人は少ないよね。作るの大変だし」



「食いたいもんを食う。正月はそういうもんだ」



「それは、それぞれご家庭によって違うでしょ?」



「まっ、そうーだな」



20分ほど待ってやっと会計が終わる。


車に乗り込みスーパーから出た。



「先に飯だな。混む前に行くぞ。この近くにラーメンあったんだよなぁ」



亜紀の記憶を頼りに進むとこじんまりとしたラーメン屋に到着。


地元の人たちに愛されて50年とか言いそうなラーメン屋だな。


お店の中に入るとお客さんは数人だけ。



「テーブル席へどうぞ〜」



エプロンを付けたおばさんに言われてテーブル席に座る。



「何食う?餃子食う?俺、食いたい。チャーハンも食いたい」



「食べればいいのでは?こういう時は食べたいものを全部食べるべき」



で、私は何を食べようかなぁ。


味噌?


醤油?


塩?


タンメンもいいけど。


野菜味噌ラーメンかぁ………………


野菜たくさん入っててボリュームある。


う〜ん、醤油ラーメンは定番って感じだ。



「普通の味噌ラーメンにする。んで、餃子頼む」



「ん、すみませ〜ん。注文いいですか?」



ボタンを押すものがないから、声をかけるしかない。


というか、調理場すぐそこだし。


さっきのおばさんがメモを持って来た。



「味噌ラーメン1つ。醤油ラーメン1つ。餃子2つ。半チャーハン1つ。以上で」



「味噌1つ、醤油1つ、餃子2つ、半チャーハン1つでよろしいですか?」



「はい」



「お待ちくださいね」



おばさんは歩きながら注文を調理場に向かっていう。


調理場からは「はいよ!」という声が聞こえた。



「日本にいる間は日本食をたくさん食べるの?」



「だな。蕎麦食いたい」



ラーメン屋に来て蕎麦を食べたいと言うのか。


でも、年越し蕎麦は作るか。



「年越し蕎麦ならお父さん作るよ」



「なら、お前の家で食う。凛のパパさんは寝泊まりは許してくれないからなぁ。毎回、家に帰って来る」



「来るのはいいけど、両親はいいの?日本に帰って来たんだから家族団欒を楽しみたいとか言われない?」


「あ〜、ん〜、今の俺は檜佐木家から離れてるからな。卒業証書が貰えれば、家族団欒を要求してくるだろ」



なるほど。


そこら辺も区別するのか。



「あなたより親がキツいかもね」



「動物はいつも通りだったけどな」



動物も変わっていたら、それはそれで嫌だな。


飼い主のこと忘れてしまったかもってことでしょ?


絶対に嫌だ。


ケイが私のこと忘れてしまうなんて凄く落ち込んじゃう。



「お待たせしました。味噌と醤油。餃子と半チャーハン」



運ばれたラーメンからは凄くいい香りがする。


寒い時期に食べるラーメンも最高だな。


食べ終わる頃にお客さんも入って忙しそうだ。


いいタイミングで来たみたい。


次のお店はもち米を買いに行く。

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