第469話

クリスマスから4日経過。


私は目の前のスイーツと睨めっこしている。


洋菓子は比較的作りやすかったが、和菓子がどうも難しい。


これ、和菓子って言えるのかな?


洋菓子に見えないかな?


だが、生地でサンドしたらただのどら焼きになる。



「凛。焦って作ると失敗するよ。というか、もう急ぐ必要ないと思うけど」



お父さんは私が失敗した和菓子の生地を持ち上げながら言う



………………。


私にもっと才能があれば良かったのに。


最後の最後に詰んでしまった。



「うまっ!これマジでうまい!煮物ってこんなにうまいんだなぁ。うちのはしょっぱいぞ」



「こらっ!つまみ食い禁止!お行儀悪い子だよ。亜紀君」



「腹減ってんだよ。家に帰ったらドーナツがテーブルの上に置かれているだけだった。母親のメモ書きにはラブラブデートに行って来るから、手作りのドーナツでも食べてなさいって書いてあったんだ。しかも、そのドーナツ油吸いまくって重たい。サクッフワッがないんだ。店で買えよ」



「お母さんが亜紀君のために作ったものでしょ?そんなこと言わないの」



「カツカレーが食いたい。なぁ?カツカレー食わせてよ」



「ここは食堂じゃないよ」



「つーか、息子のために家にいるんじゃないのか?帰ったらいないってどうなんだ?なぁ?どう思うよ。犬と猫は喜んでくれたのに」



「甘えたいのかな?恋しくなった?寂しくなった?」



「性格悪いな。俺、親の顔見ないでこっちに来たんだけど」



「そのまま家で待てばいいのに。だから、デートに行っちゃったんでしょ?帰って来てもすぐこっちに行くだろうからって。1日家にいるなら一緒に過ごしたはずだけど」



「デリバリーよりこっちの飯がいい!」



「………………亜紀君。君って子は」



そう。


亜紀が無事帰国してしまったのだ。


嫌なことではない。


嬉しいことだ。


だが、課題は残ってしまった。


目標を達成するのって難しい………………



「カツカレー作ってくれよ。めっちゃ食いたい」



「アメリカでも食べられるでしょ?」



「日本のルーはあっちじゃ高い。というか、作るのって大変だなぁ」



「それが本音だね。しょうがないな。材料もあるから作ってあげるよ。カツカレー」



「マジッ!!」



えっ?


作るの?


今日は焼き魚じゃなかったの?


お父さんは冷蔵庫からカレーに使う材料を取り出す。


そして、カレーを作り出した。


あの、焼き魚食べたいです。



「えー、カツカレーにするの?焼き魚はどうするの?私、焼き魚がいいのに」



ソファーに座りながらテレビを見ていたお母さんが反応した。



「なら、カツカレーと焼き魚にしようか」



「そうだね。どっちも作っちゃえばいいよね。私は魚を捌くから」



キッチンに2人が立てば私は邪魔になるのでダイニングテーブルに移動する。


並んで料理しても広々なキッチンにしたが、3人だと少々狭いのだ。



「こっち来たらめちゃくちゃ雪積もってて驚いた。珍しいよな。こんなに積もるの」



「昨日も降ってた。今年の冬は大雪警報だから」



「外に出かけるのも大変じゃん。こんなに積もっていたら車も走れないだろ」



「毎日雪かき。重労働ね。それから出勤するみたい。お父さんとお母さんはもうお休みだから大丈夫だけど。買い出しがあるから、雪かきはしてる」



私は課題があったから雪かきしていない。


体を動かすのは良いことだが、それをすると終わらない。


まぁ、雪かきしなくても終わらなかったけど。



「明日暇か?暇だな。よし、暇だ」



「………………出かけましょうって言えばいいのに」



「課題終わってないんだろ?」



「終わってないって言ったら出かけないの?」



「いや、出かける。だから暇という考えにした」



………………。


だから、普通に誘ってよ。


断るつもりないから。



「こんなに雪が積もっているのに出かけるの?遠くに行っちゃっダメだよ。雪で帰って来られなくなるかもしれないから。電車も何度か休止しちゃってるし。あぁ、泊まりも禁止ね。帰って来なさい」



お父さんは包丁を持ち上げて亜紀を見ながら言う。



「過保護だなぁ。もっと自由にさせてやれよ。近場に何もないじゃん。駅ビルにでも行けってか?違う!俺が行きたいのはそこじゃない!!」



「買い物でも頼もうかな。車貸してあげるからさ。お正月の食材でも買ってきてくれる?そうしてくれると俺も麻矢も正月の準備が出来るからさ。買い出し班と作業班だね」



「勝手に予定が決められていく………………まぁいいや。行ってやる」



えっ?


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