第463話

店員さんは準備していたのかメモ用紙を大塚さんに渡して、1つ1つ丁寧に教えていた。


よく聞かれるから準備をしているみたいだ。


何回も聞かれるなら事前に準備していたほうがスムーズだよね。


時間も限られているし、効率を考えるといい方法だろう。



「そちらのお嬢様は何かお聞きしたいことありますかぁ?………………お肌綺麗ですねぇ?というか、本当に綺麗だな。肌も白い」



あれ?


なんか、ちょっと声が低くなってない?


店員さんの顔がググッと寄ってきて、思わず私は後ろに引いてしまった。


急に近寄ってきたらびっくりするよね。


というか近いな。


初対面の人にグイグイ来られると嫌なんだけど。



「おっと、失礼しました!びっくりしちゃいましたぁ?ごめんなさい。でも、本当に綺麗でびっくりしちゃって」



私の肌が綺麗?


どこをどう見てそう言っているの?



「あぁ、椎名さんって確かに毛穴とか気にならないよね?」



「毛穴?」



「ガバガバ開いちゃってる人もいるじゃん。閉じた毛穴がちゃんと閉じないと汚れが溜まるんだよ。ニキビとか」



………………。


自分の肌をしっかり見たことないや。


化粧だってそんなにしないし。



「肌が白いのは昔からなの。でも、前より黒くなったよ」



「えっ?それで?」



「うん」



「………………不健康そう。それより白いってどうなの?」



「不健康には見えていたと思う」



青白いって感じだったから。


太陽輝く時間に外出はあまりしていなかった。



「いいですねぇ。肌が白いの憧れちゃうますよ。すぐ焼けちゃうから困っているんですよねぇ。あっ、時間だ!では、次の人が来るまでお寛ぎ下さい」



滞在時間は10分くらいか?


他のお客さんからしたら短いのかもしれないけど、私には凄く長く感じた。



「ねぇ?さっきの人さ、素出てたよね。声、一瞬だけ低かったよね?椎名さんの肌見てびっくりしてたよ」



「急に近寄ってきたからびっくりした」



「思わず素が飛び出たからね。椎名さんって化粧水使ってる?」



「お母さんの」



「共有か」



「………………」



なんか、何かを言いたそうな目で見てくるな。


化粧水の名前は知らないよ。


気にしてないから。


これを使いなさいって言われて使っているだけだし。



「次の人には何を聞こうかなぁ」



「カフェじゃなくてお悩み相談室だよね。ここ」



「相談料コミコミだからね」



「そのうち占いとかやるかもしれない」



「もうやってる」



あっ、すでに初めていたのね。


10分後、次の店員さんが来た。



「お嬢様方、何か知りたいことありますか?」



さっきの子と違う普通だ。


キャピキャピしていない。



「私たち製菓学科なんですけど、洋菓子と和菓子をそれぞれ一つ作らないとダメで。何を作ったらいいと思います?」



えっ?


そんなこと聞いちゃうの?


それでいいの?


他のお客さんはそんなこと聞いてないよ。



「そうですね。洋菓子ならショコラ系とか?和菓子ならマロン系?」



まぁ、そうだよね。


専門外なこと言われたら、ありきたりなこと言うよね。



「ショコラかぁ。競争率高そう。マロンねぇ………………美味しいよねぇ」



あっ、これは思い出したな。


だからそんな質問しなきゃいいのに。


癒されてないし。



「大塚さん、目が遠いよ。戻ってきて」



「お嬢様。お料理ができました」



運ばれてきた料理を見て、私の頬はピクピク動く。


カラフルな色をしている料理だな。



「おぉ、可愛い」



大塚さんはスマホで料理を撮影を始める。



「お嬢様は何かありますか?まだお時間がございます」



えっ?


えっと………………その………………


ん〜。


何も出てこない。


悩みがないわけではないけど、こんなところで話すものじゃないし。



「あの、大丈夫です」



「分かりました。ではごゆっくりお寛ぎください」



店員さんはお辞儀をしてから去っていく。



「よかったの?」



「うん、特にないから」



情報量が多すぎて全部処理できない。


ますが、目の前の料理をじっくり観察してから食べようと思う。


じゃないと思考回路がパンクする。


味は普通。


うん、見た目が派手なだけだ。


それから2人の店員さんとお話しをしてからお店から出る。


結構長居してしまったから、空は暗くなっていた。


ボケーッと空を見ていると誰かが私の肩を叩いた。


振り返ると知らない男の人が立っている。



「さっきの肌の綺麗なお嬢様だ。こんばんは」



いや、君………………


それはダメだろ。


声掛けNGじゃない?

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