第460話

大阪から戻って来てからあっという間に季節は冬。


今年の冬は凄く寒いらしく雪が何度も降る。


ケイは寒いのかストーブの前から離れようとしない。


丸まって寝ているところを見ると、動く気力もないらしい。


私も寒いからモコモコな部屋着で過ごしている。


あったかいコーンスープを飲みながらスマホを操作して真理亜とやり取りしている。


真理亜も寒いのか外に出歩かず家の中でぬくぬくしながらチョコケーキを食べているとか。


そのチョコケーキは誰が買って来たのか分からないけど。


大学の帰りに買ったのか、いつものように頼んだのか。



「凛、今年のクリスマスケーキだけど!誠也が特大ケーキを作るらしいから飾り付けを手伝いましょうね!」



「ケーキ?特大ケーキを作るの?真理亜はいないけど。クリスマスは用事があるって言ってたよ」



「大丈夫。一日で食べようとしなければいいの」



なんで特大ケーキ?


誰も来ないならそんなに大きいのいらないのでは?



「楽しみね。フルーツたっぷり!」



お母さんが嬉しそうだからいいか。



「今日、お父さんは?」



「う〜ん、遅くなるみたい。今のシーズンは大忙しね。クリスマス料理特集とかで。今日の晩御飯どうしようかなぁ。誠也は食べてくるって言っていたし」



「冷蔵庫は?」



「それがねぇ、空っぽなの」



それは凄い。


うちの冷蔵庫が空っぽなんてあるんだ?


買い溜めが普通なのに。


卵いっぱいあったのに。



「なら、何か買って来ようか?」



「あら、いいの?でも、作るの面倒だからお弁当にしましょう!寒いから配達してもらおうかなぁ」



「買ってくるからいいよ。近くのお弁当屋さんでいいでしょ?歩いて行けるし」



「寒いのに外出ちゃうのね。あったかい格好で行きなさい。マフラーと耳当てと手袋」



雪国じゃないからそこまで防寒しないよ。


部屋着のままで行ってもいいかな。


着替えるの怠いし、上にダウンを着ちゃえばいいや。



「はい、お金。凛が食べたいお弁当でいいからね」



「分かった」



ダウンを着てマフラーと手袋をしてから家から出る。


外に出ると冷たい空気が体全体を包んだ。


今日の夜も冷え込むだろうなぁ。


雪、降るかもしれない。


坂を下り駅方面に歩く。


お店が多い通りに出ると、街路樹がイルミネーションで光っていた。


真っ暗な時間だったら綺麗かも。


まだ少し明るいからなぁ。


お弁当屋さんに着くと並べられているお弁当を見る。


どうしようかなぁ。


南蛮チキンもいいし、ハンバーグもいいし。


焼き魚も美味しそうだけど。


ここ最初に目がいった南蛮チキン定食にしようかな。



「南蛮チキン定食が2つと豚汁2つください」



「はいよ」



ここのお弁当屋さんは家族経営らしく、なくなり次第終了なのだ。


今回はまだ残っているからラッキーだ。



「あっ、追加でお願いします。メンチカツ3つください」



「メンチカツ3つね!ありがとう!」



肉だらけになるけど食べたい。


お店であげる揚げ物は美味しい。


お弁当を買い来た道を戻る。


空は真っ暗になっておりイルミネーションが綺麗に光っていた。


早く帰らないとほかほかメンチカツが冷める。


冷めたらレンチンすればいいけど、やはりこう言うのは気分だ。



「ありゃ?嬢ちゃん。こんなところでどうしたん?」



ん?


ヒョイっと目の前に飛び出してきたのは海だった。



「あなたもなぜここに?」



「おつかい。こっちしか売ってない調味料があるからそれを買いに来てなぁ。なん?嬢ちゃんもおつかい?」



「夜ご飯を買いにきた。というか、その帰り」



「ほーけ。偉いなぁ。寒いのに。ハハッ、寒くても外に出なきゃならん時あるよなぁ」



なぜそこで遠い目をする?


何かあったのか?



「大塚さんは家でレポート頑張ってるらしいわね」



「あ〜、なんか泣きそうになっててん。嬢ちゃんは大丈夫だっちゃ?」



「問題ない」



レポートは個人テーマだから手伝うことできないし。


締切近いから必死なんだろうなぁ。


原因は目の前の男も入っているだろうけど。


それを言うと責任感じて面倒なことになりそうだから言わない。


一緒に手伝うとか言い出しても困るし。


ここは大塚さん1人でやったほうが確実に終わるだろう。


海は少し寂しいかもしれないけど。

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