第453話

たこ焼きを食べ終えてからお土産を見始める。


大阪らしいものがたくさん売っているから、見るだけでも楽しいが………………


どうも奏多の様子が気になる。


柚月は至って普通なのだが、奏多の様子がどこか変だ。


お土産を見ながらそれを頭の片隅で考えてしまう。


知らないキャラクターのキーホルダーを手に取り何気なく値段を見ては元の場所に戻す。



「買う気ある?」



いつの間にか隣にいた柚月がボソッと言った。


買う気がある?かと聞かれたら、もちろんあると答える。



「ある」



「手に取っては戻す、手に取っては戻すを繰り返しているけど。椎名さんってアニメ見るわけ?それ、アニメのキャラクターだけど」



「見ない。知らない」



「………………」



なら、なんで見てるんだ?って言いたいんでしょ?


なんとなく歩いてなんとなく見つけたから。



「そのキャラクター人気なんだよ。子供から大人まで人気。地域で限定品が出るくらいだからね」



「へ〜ぇ」



「グッズを集めてる奴いたっけ」



集めている人?



「部下の誰かが集めているの?」



「そう。ハマったらしいよ」



裏の人でもハマるんだね。


そこに驚いたんだけど。


アニメを見ているってことだよね?



「ハマるんだ」



「ハマるんだよ。監視の目がなくなったからなのか、表のことに手を出してる」



「それはいいわけ?」



「いいんじゃない?仕事に支障はないから。俺が表と接しているのに、部下にはダメってわけにはいかないでしょ?」



それはそうだけど。


表の知識を今から入れ込んで大丈夫なのか?


今が大事な時期なのに、そんなユルユルな感じでいいのだろうか。


喜一がいなくなった後の始末は今の続いているはずなのに。



「奏多のことが気になる?ダメじゃん。椎名さんは俺のことを見てなきゃ」



「何言ってるの?」



「だって、奏多のこと見てるから。何をそんなに気になるわけ?」



あなたもよく見ているのね。


まぁ、そうだろうなって思うけど。



「様子がおかしいと思ったから」



あっ、猫のキーホルダーだ。


これもアニメのキャラクター?


なんか何種もあるんだけど。



「ふ〜ん、よく気づいたね。未熟じゃないんだけど、海と比べるとまだまだ。アレでも動いてるほうだよ」



動いてないとは言ってないけど。



「汗だくで来たあとから様子がおかしかったから。ソワソワしてる」



「ソワソワ………………まぁ、ソワソワって感じか?当たってはいるけど。大したことないよ。でも、奏多には言っておこうかな。で、それ買うの?なんのキャラなのか分かってる」



「知らない」



「だよね。それも人気なものだよ」



5段全部アニメの商品なんだね。


だが、私には合わないかも。


普通に定番品を買ったほうがいいな。



「これは買わない。普通に定番品にする」



「なら、あっちだね」



「あなたは買わないの?」



「買わない。買ったところで使わないし食べないし」



ふと、大塚さんの様子が気になり見ると、カゴの中にいっぱいの商品が詰め込まれていた。


というか、奏多が持っているの?


えっ?なんか、それでいいの?



「アレはいいの?大塚さんに使われてるけど」



「いいよ。じゃんじゃん使ってやって。奏多もお勉強中だから」



「それ、大塚さんに言うと本当にじゃんじゃん使うよ」



遠慮はしないと思うから。



「えっ?なら使うよ。椎名さんの分もよろしく。というか、帰りも持って行ってもらおうよ。荷物を持って帰るのも大変だし、電車が辛いよねぇ」



しっかり聞こえていたらしい大塚さんはニヤニヤ笑う。


それを横目で見ている奏多は「えっ?マジで?」とでも言っているような表情をしていた。


帰りは無理なんじゃない?



「帰りは車で送るから大丈夫だよ」



「ちょっ、壱夜さん。勝手に決めないで下さいよ」



「夜道は危ないでしょ。お前が電車に乗って送るのか?」



「それは嫌です。壱夜さんのそばを離れるわけにはいかないので」



「なら車で送れ」



「………………はい」



圧に負けたな。



「というか、荷物を宅配してくれるといいなって思う。ホテルに着いたその後が嫌じゃない?」



………………。


チラッと柚月を横目で見ると口角が少し上がっているのが分かる。


これは、どっちだ?



「うわっ、これが海さんの彼女かよ」



それは言っちゃダメでしょ。



「奏多、宅配の準備をしてあげて」



それを聞いた奏多は目を大きくして驚いていた。

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