第452話
飲み物を買い、近くのベンチに座りながらたこ焼きが来るのを待つ。
「部下ってパシリが当たり前なんだね。海さんもパシられてるから、同じなんだなぁ」
大塚さんのパシリは、違う意味のパシリだよね?
購買のパンを買ってこいよ、みたいな感じのだよね?
海のパシリは別物だからね。
「海は、仕事をたくさん与えるといいよ。その方が元気になるから。反対に仕事がないと不安になるらしいから。それが分かってるから、何かしら仕事を任しているんじゃないかな?そんなことも頼むの?ってことも頼んでるはずだよ。将来のことも考えて、お店を任せようってこともそれがあるから。お店は働かなくちゃ成り立たないでしょ?」
海がお店を継ぐかもしれないって知ってるのか。
誰かが教えた?
「誰に教えてもらったの?」
「東賀さん」
まさかのお父さんだった。
「海の父親も飲食系だし。親子で似たような職業になるんだねぇ。経営難にならないようにしっかり経理を誰かにやってもらったほうがいいよ。今は家族だけでやってるらしいけど」
確かに海の父親はbarだった。
別物だけで飲食系列ではある。
「海さんって、親のことあまり話さないんだよねぇ」
そのうち、親に会う機会があると思うけど。
縁を切ったわけじゃないからね。
喜一は亡くなったわけだし。
あの店も柚月は手放したらしいから。
「海は自分のことあまり話さないっていうか、話せるものがないっていうか。真面な親じゃないから。家族旅行に行っていたような家じゃないし。育った環境が君とは違う。子供の頃から悪影響しかない環境にいたらグレるよね?だって、それしか知らないから。親が表を知って欲しいって思っていても環境がダメならダメじゃん」
ハッキリ言うのね。
それが悪いというわけじゃないけど、大塚さんのことも考えてあげて。
「今は話す時期じゃないと思うけど。自制するのに頑張らないと」
「自制、ねぇ………………あれだけ表の女はいいって言っていた男が自制できるわけ?椎名さんだって知ってるでしょ?何度か聞いたはずだよね?」
いや、確かにそうなんだけど。
「今なら大丈夫でしょ。環境が大きく変われば変わるでしょ」
「へ〜ぇ」
口元は笑っているが目は笑っていない。
納得はしていないのだろう。
「あのぉ、彼女の私から言うと海さんは自制といいますか、ちょっと違うんです。別荘にいた時は抑え込もうとしていましたが、マンションに移った時は抑え込もうとするより発散させようとしてました」
大塚さんは柚月の目をしっかり見ながら言う。
あら、これは………………
最初の頃と比べると成長?した。
「お待たせしました。買ってきましたよ〜」
たこ焼きを片手に持ち、汗だくの奏多が戻ってきた。
走ったのか………………それも、普通に暑いのか。
なんか急いだ?
「熱いので火傷に注意ですよ〜。はい、お姫さんたち」
「いただきます!」
大塚さんはたこ焼きを受け取り爪楊枝を刺して食べる。
お姫さんっていうのはスルーなんだね。
「うまっ!これ、マジでうまい」
私も爪楊枝を使い食べる。
トロトロのふわふわだ。
もう一本の爪楊枝を使いたこ焼きを刺して柚月に渡す。
「あっ、これ美味しい」
評価は良しらしい。
「柚月さんのどうなんですか?自制できてますか?」
たこ焼きを食べながら、まさかの質問をしてくる。
気軽に質問しましたって感じだ。
「自制?俺が?ハハッ!俺は海とは別物だから。枠に収まるような状態じゃないよ」
「自制できてないと?」
「その考えを捨てたほうがいいよ」
大塚さんは「ふ〜ん」と言うだけで、他に何も言うことはないらしい。
「ぶっ飛んだ子になったなぁ。アレがこうなるのか」
なんだその反応は?
奏多は珍しいものを見るような目で大塚さんを見る。
珍獣じゃないからね。
出会いの頃と比べているのか………………
海と付き合うということにもなったし。
分からないもんだなぁ。
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