第451話

串カツって結構食べられるんだね。


1本の量がそんなに多くないからなのかな?


いろんなものが食べられるからいいけど。



「お腹いっぱい。ごちそうさまでした。そして、ありがとうございます」



大塚さんは串に向かって言ったあと、最後に柚月に向かってお礼を言う。


払えということだろう。


邪魔してきたのだから奢って貰わないとっていう態度を隠さない。



「奏多」



「は〜い」



奏多はバッグから財布を取り出し会計を済ませた。


柚月は自分で財布を持たないの?


それくらい持ちなよ。


お店を出て、次はどこに行こうかとスマホで検索。


食べたばかりだから、何かを経由したほうがいいのでは?となり、射的に行くことになった。


お祭りの出店でよく見かける射的だが、いつもやっている射的は珍しい。


射的のお店に着くと奏多がみんなの分を支払ってくれた。



「私、射的得意なんだぁ。お菓子ばかりだけど。絶対に当たるわけない景品とかあるじゃん?あれ、やめてほしいよね。その分、お菓子を置いてくれないかな?駄菓子パックとかさ。ゲーム機ってどうやって落とすんだよってなる。つーか、絶対無理!倒れただけじゃダメなんでしょ?一発で落とさないとダメとかさ。一発で落とせるわけないじゃん」



大塚さん、射的屋さんの前でそうんな堂々と言うものじゃないよ。


店員さん、苦笑いしてるから。



「椎名さんは射的やったことある?」



柚月はコルクを詰めた銃を私に渡してきた。



「大丈夫。当たる、はず」



「自信無さげだね」



「あなたは?」



「あるよ。最近じゃないけど。子供のときにある」



子供のときって………………


それはどのくらい昔のことなんだ?


幼児の時?



「うわっ!意外と難しいなぁ、これ。ちょっと右に曲がるんし。癖強くない?」



奏多は既に打ち始めていたらしい。


当たるが、落ちる気配はない。


ユラユラ揺れてその場に止まる。


そんな状況の中、最初に景品を当てたのは大塚さんだった。


宣言通り、得意らしい。


一発目は癖を見て、二発目からしっかり当てている。


これ、大塚さんにお願いしちゃったほうが当たるかもしれない。


私の手の中にある銃をチラッと見る。



「椎名さん、人にやってもらおうとか考えてない?自分の分は自分で当てたら?」



そう柚つきに指摘されてしまい、銃を構える。



「分かってる。当てればいいだけ」



なぜ、私が考えていたことが分かった?


一発目はやはり当たらない。


では、二発目は?


これも少し左だ。


微調整しなければならないのが面倒だな。



「椎名さん。少し斜め上」



柚月が私に覆い被さるようにして銃を固定する。



「はい、ここ」



言われた通りに打つと3つも落ちた。


コルクをセットして構える。


そして、また柚月に微調整されながら撃つ。


これって、私が撃ったことになるのか?


ただ、引き金を引いただけ………………



「椎名さん。それズルいよ」



やっぱり、ズルいよね。


大塚さんは全部打ち終わったらしく、袋の中は5つのお菓子が入っている。



「壱夜さんはやらないんですか?ちょっと期待してたんですけど。全部、その子がやってますよね?」



「ん?やってるみたいなもんじゃない?」



「………………まぁ、そうですねぇ」



奏多が言いたいのは、自分で構えてやらないのか?ってことだ。


たくさん当てたお菓子は大塚さんにも分けた。



「では、たこ焼きを食べに行こう!」



射的をしたからといってすぐにお腹が空くわけではない。


だが、私たちには時間が限られている。


名物をたくさん食べてお土産も買わないといけないのだ。



「じゃぁ、奏多並んで買ってきて。1つでいいから。行列できてるし。その間に、何か飲む?」



柚月はクイッと指を前に向ける。


そこにはフルーツジュースの旗がある。



「分かりました。買ってくるんで、大人しくここにいてくださいよ!探すの大変なんですから!電話に出てくれないし」



えっ?行くの?


あなた、護衛じゃないの?


そのはずなのに奏多は1人で行ってしまった。

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