第447話

お店の前に着くと予想通り並んでいた。


発券番号は10人待ち。


まぁ、しょうがない。


しょうがないけどお腹空いた。



「この後の予定はなんだっけ?」



「カップ麺の工場見学。それで今日は終わりだよ」



「ラーメン食べたいなぁ」



うん、ラーメンも食べたい。



「夜食のラーメンって最高に美味しいよね。アレってなんであんなに背徳感あるのかな」



「夜に食べるからじゃないかな?夜中にラーメン食べたことないけど」



「えっ?ないの?」



「ないよ」



「なら、今日食べようか。親がいない今がチャンスだよ」



「うん、いいね」



コンビニとかで買うか。


お湯はケトルで沸かせばいいし。


親に内緒でするのって結構楽しいのね。


メニューを見ながら待つこと20分。


カウンター席に案内され決めていた料理を注文する。



「ご飯食べたらデザート食べる?」



「さっきのクレープ?」



「そう!しょっぱい物を食べたら甘い物の食べないと!やっぱ、見るより食べるほうがいいじゃん」



歴史を見るのは好きだけど、人それぞれだからね。


でも、大阪まで来たなら食べたい。


自由行動の日は名物を食べなければ。


お昼を食べてからすぐクレープにも並び近くのベンチに座って食べる。



「甘いの最高。夜食はラーメンとアイスかな。お風呂上がりのアイスは美味しいよねぇ」



あっ、それは分かる。


エアコンが掛かった部屋でアイスを食べるのもいい。


アイスより水を飲みなさいって言われるけど。


お父さんが色々アイスを買ってきてくれるから選ぶのも楽しい。



「それ、お昼ご飯?えっ?マジで?」



目の前を日向とその友達が通ったのだが、私たちが食べている物に驚いたのか足を止めて確認してきた。


日向はあまり気にしてないが、その友達は気になったらしい。



「違う。お昼を食べてデザートも食べてる」



「甘いものは別腹って?いやぁ、その量で?」



「食べたいから食べる。量は関係ないの」



「関係あんだろ。クレープって結構な量だろ。そんなたくさん食べる女引くわ」



「うるさいな。お前に好かれたくないし」



「態度もデカい。大塚って結構ガサツなところあるよな。そんなんじゃ彼氏できないぞ」



「失礼だね。あんたも、態度デカいじゃん。あと、彼氏いるもん」



「はっ?」



強気な態度だった男は目を大きくして驚いている。



「えっ?ちょっ、えっ?マジで?」



なぜ、そんなに驚いているんだ?


隣にいた日向は男の耳元で何かを囁くと、男は急に黙ってしまった。


何?


そして、その男はフラフラと歩いていく。



「ごめん。喧嘩売ったみたいな感じになって。アイツ、ちょっと精神的に不安定だから気にしないで」



日向はそう言ってから去っていく男を追いかける。


そして、残りの人たちも追いかけて行った。


はて?



「子供は子供と仲良くしてろ!あっ、でも、それだと犯罪か」



「何が?」



「椎名さんは気づいてないか。ずっと前からちょっかい出してきてたの。ちょっとしたことでグチグチ言ってくるから頭にきてさ」



「へ〜ぇ、好きな子を虐めたくなるお年頃?」



「………………椎名さん。どうしちゃったの?そんな言葉どこで覚えたの?」



悪い言葉を覚えたつもりないけど。


えっ?


当たりだったの?



「私、当たってた?」



「大当たり。直に言われたわけじゃないけど、人伝てに言われた。あんな奴お断りだ」



へ〜ぇ、そんなことあったんだ。



「それ、海に言った?」



「言ってないよ」



「一生言わないで。あの男を抹殺するかもしれないから」



「そこまで?」



「抹殺まではいかないけど、それなりのことはするんじゃないかな?大塚さんの知らないところで色々やってるはずだから。そこは目を瞑ってあげよう。彼なりの生き方ってあるから」



あの男の態度はあまりよろしくない。


知らないままのほうがいい。


あの男がアホなことをしなければ問題ないのだから。


アホなことをしなければ、ね。


例えば、海に会おうとしたり………………


少し離れたところで見る程度ならいいけど、話しかけて探ったりするとアウトだろうな。


今はルンルンな状態だけど、一気に急降下もあり得る。


本当に裏のところは恐ろしい。

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