第446話
大阪に到着する頃に大塚さんに起こされて、目を擦りながら新幹線から降りた。
うん、熟睡したかもしれない。
顔、洗いたい気分だけど洗う暇がない。
「椎名さん。もう大丈夫?」
「うん。起きた」
「そっか、それは良かった。朝ごはん食べてないけど大丈夫?私、新幹線の中で食べたけど」
「大丈夫。お昼まで我慢する。あとチョコバー持ってきた」
朝の移動より大阪ついてからの移動のほうが楽だ。
バスでも歩きでも問題ない。
ということでみんなと一緒に行動する。
いつの間にかガイドさんがいて、大阪案内をしてくれるらしい。
大阪城に着くとみんなで記念写真を撮る。
撮影が終わると大阪城の内部に入る。
「エレベーターがあるって違和感あるよね」
大塚さんは、城に現代物があるのが少々気に入らないらしい。
でもさ、よく考えてみてよ。
展望台まで登るの辛いよ。
「では、階段で行きますよ〜。降りる時はエレベーターですからね〜」
いや、逆にしろよ。
階層ごとに回るから疲れない………………なんてことはない。
疲れるよ。
ずっと動いているのだから。
「は〜い、離れないでくださいね。横に広がらないでください」
小学生の修学旅行みたいだな。
「模型ってすごく細かいよね。これ、手で作るんでしょ?凄いよね。こんなに小さいのに」
そうだね。
写真より模型にすると地形がよく分かる。
細かく再現しているから、より分かりやすい。
展望台は1階よりかなり狭い空間だった。
下から見たときは大きそうだったけど、実際はそんなに広くないのね。
「へ〜ぇ、思ったよりそんなに高くないね」
大塚さんはスマホで風景の写真を数枚撮る。
昔の人にとっては高いと思うけど、現代は城より大きな建物があるからね。
「ん〜、ちょっと椎名さん。そこに立ってくれる?」
「えっ?うん………………」
大塚さんに指示された場所に立つと、スマホを構えてパシャリと1枚撮った。
「よし、完璧!」
「なんで写真?」
「送ってって言われたの」
………………。
ん?
誰に?
「送って?誰に?」
「海さんに」
………………。
いや、あの、なんで私の写真を送ったの?
そこは自分の写真じゃないかな?
「私じゃなくて大塚さんじゃないかな?」
「なんとなく」
「撮ってあげるよ」
海も私の写真を送られて残念がっているはずだ。
彼女じゃない女の写真なんていらんでしょ。
「いや、城をバックで撮るもんだよね。今、写真送ったけどさ。城からの景色を撮ってところで、よく分からないってことに気づいた」
確かにそうだね。
「あっ、返事が来た………………椎名さん、笑顔は?って」
「………………」
うるさい。
写真を撮るよって言われてないし。
笑顔なんて作る暇なかったよ。
というか、そこに突っ込むなよ。
パシャリとまたシャッター音が聞こえる。
「はい、怒りマークをつけて送信」
私で遊んでる?
「あっ、すぐきた。焦ってるスタンプだ」
「大塚さん、私のことはいいからさ。自分のことを送ってちょうだい」
「ん、でもさぁ、椎名さんのことも報告してねって言われたんだよねぇ。なんで?」
私に聞かれても分からないよ。
まだ何かあるとでも思っているの?
でも、ここまで追っかけて来ないし………………
念の為ってこと?
「皆さん!降りますよ〜」
ガイドさんに指示に従い展望台から降りて下の階に行く。
エレベーターに乗る列に並ぶが結構な人数がいる。
「お腹空いたなぁ。お昼何にする?大阪城公園で自由に食べていいんだよね?ん〜、これは?」
大塚さんはスマホの画面を見せてきた。
「それ、クレープなんだけど」
「ん〜、ここの定食屋さんは?いろんなのあるよ」
「うん、そこでいいよ」
お昼はちゃんと食べないと私の体がもたない。
大阪城から出ると歩いて公園に向かう。
「では、ここで一旦解散です。時間になったらここに集合ですからね!」
先生がそう言うと、一斉に生徒があちこちに散る。
「椎名さん、行こう」
「うん」
観光地なだけあって、レストランもそれなりに混んでいるようだ。
これ、並ぶかなぁ?
お腹空いたんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます