正直に

第445話

夏休み気分が無くなった頃、課外授業の行事の話が多くなった。


課外授業と言いながら、まぁ、その、お遊びのところもある。


先輩方は北海道に行ったらしい。


では、今回はどこだ?


飛行機で北海道いいなぁ。


今回も北海道がいいなぁ。


カニ食べたいなぁ。


味噌バターラーメン食べたいなぁ。


そんなこと考え中に先の発表をされた。


行き先は大阪。


飛行機で行く場所じゃない。


海を渡らない………………


海鮮丼食べたかった。



「椎名さ〜ん。そんなにショックだった?」



「北海道が良かった。海鮮丼。アザラシ」



「………………アザラシと出会えるわけじゃないよ。動物園に行ったかもしれないけど。先輩たちは行ったらしい」



「は〜〜〜〜ぁ」



「デカイため息」



もしかしたら北海道かなって思ったのに。



「大阪にも美味しいものたくさんあるよ」



「それは分かるよ。串カツとかお好み焼きとか」



「大阪城にも行くよ」



「動物園には行かない」



ふれあいがしたかったのに。


班分けはというものは今回ないらしい。


仲良しの人たちと好きに行動していいと言われた。



「自由行動のとき、どこ行こうか?」



「食べ歩きしたい。お好み焼き食べたい」



「やっぱ、道頓堀かなぁ。定番なところは行きたいよね」



「行きたい。大塚さんが行きたい場所でもいいよ」



「う〜ん。大阪天満宮は?学問の神様で有名じゃん」



なるほど。


それはすっかり忘れていた。



「なら、そこも行こう。自由行動は2日間あるから」



自由行動と聞くと楽しくなってきた。


家に帰って課外授業が大阪だと伝えると、お母さんは「いいなぁ」と言った。


その言い方が本気でそう思っている言い方だった。



「誰と行動するの?まさか、日向じゃないよね?そこでも組まされたわけじゃないよね?」



「違う。自由だから大塚さんと行動するの。天満宮と道頓堀に行くの」



「定番なところに行くねぇ。テーマパークに行かないの?すぐ行けるじゃん。指定されてないんでしょ?自由なんだから」



確かにお父さんの言う通り、テーマパークに行く人もいる。


でも、私はそこより大阪の街を歩きたいのだ。



「たくさん食べるの」



「あぁ、食べ歩きか。そっちのほうが色々見られるからいいかもね」



課外授業が大阪であることを光さんにも伝えると、こちらもお母さんと同じ反応をした。


海も大塚さんから話を聞いたのか「行きたいわぁ」と言った。


まさか来ないよね?


そこまで酷くないよね?


少々、不安なところもあるが邪魔はさせない。


そして、課外授業当日。


朝の5時集合。


めちゃくちゃ眠い。


車の中で寝てはいたが、眠いものは眠い。



「椎名さん、眠そうだね」



「3時前起きだからね。今なら立ちながら眠れそう」



「それは危ないから起きて」



これ、歩いて駅に行くんだよね?


辛いよ。


少しの距離でも辛い。


新幹線に乗ったらすぐ寝よう。


体力持たない。


スッキリしない頭のまま歩いて、ホームで新幹線が来るのを待つ。


周りはガヤガヤに賑やかで、みんな楽しみなのだろう。


何やら、カチューシャをしている子もいる。


それって、テーマパークのだよね?


今からは早すぎると思う。


今日は自由行動じゃないよ。


大阪城だよ。



「椎名さん。新幹線着いたよ。乗るよー」



「ん〜」



「半分寝てるわ。お〜い、聞いてますかぁ?」



車で寝ているとき、到着しても起きない私をなんとか車から降ろしたのはお父さんだ。


みんなが集合している場所まで連れて行かれ、あとは大塚さんにバトンタッチ。



『凛、あまり寝てないから正常じゃないかも。ちょっと様子を見てくれる?』そう言って帰った。



そうあまり寝てないのだ。


だって、起きる時間早いから寝坊しちゃダメだって考えていたら寝れなくて。


20時に横になったのに………………


そんな私を大塚さんはポンポンと背中を叩く。


席探しやキャリーの収納など任せて、私は椅子に座りそのまま就寝。


移動時間、キャハキャハする体力もなくただ睡眠をとるだけだった。

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