第444話

お昼の時間は定食系がよく注文された。


そこまでは前と変わらないけど、デザートの注文をするお客さんが増えていると感じた。


お昼のピークが終わると、お店は一旦閉めてスタッフのお昼の時間だ。


今日はインスタントラーメン。


ちなみに、このインスタントラーメンは蓮さんが持ってきたもの。


賞味期限は5日前に切れた。


乾麺だから食べられるだろうと考えた蓮さんが光さんにあげたらしい。


それを今日のお昼にしたのだ。


味噌ラーメンだったのに、担々麺になってる。


スープの粉も使ったのかな?



「うまっ!料理がうまい人がいいよなぁ。いつも美味いもんが食える」



「そんなこと言うヤツはモテないぞ。お前も少しは料理をしろ」



「やってるし。海より作れると思う」



「最近の海は成長してるぞ。彼女のためにご飯を作りたいってお勉強中だ」



「皮剥きできるわけ?身が無くなりそう」



「練習中だ。お前も料理をしっかりできるようになればモテる」



「毎回、それ言ってるし。つーか、忙しくて作ってる暇ないし!」



「時間を作れよ。海は作ってるぞ。時間の作り方がうまい。見習え。このままだとお前より先に結婚だな」



「なっ、酷い言い方だな!俺だって!俺だって!!俺だって………………」



なんか、蓮さんの元気がなくなっている。


最後は声が小さくなって自信なさげだ。


早く食べないと麺が伸びるよ。


ウジウジ中の蓮さんを気にしながら先に完食。



「凛、デザート食べるか?」



「デザート?いいんですか?」



「お〜、ケーキのほうが売れるからな。無駄になる前に食べろ」



出されたのはいちごのショートケーキ。


これもケーキだけど。



「これ、ケーキ」



「そうだ。俺が言ってるのはそのケーキじゃない。お前だって気づいているだろ?メイン料理と一緒にデザートも出るようになった。お昼前の時間はデザートばかりだ。これを見てもお前は何も感じないのか?よく注文されてるだろ?ちゃんと連鎖がなってる」



格段に注文個数が増えているのは分かっている。


チョコ好きにはたまらないのか、2個目も注文してくれたお客さんもいた。



「何も感じないわけじゃないんです。でも、なんだかフワフワな感じもあって。注文回数がここまで違うと」



「まぁ、そうだな。イマイチな時期を知ってるからな。それと比べると差があるか。こっちから宣伝するだけじゃ見込みが少ない。看板がない店だぞ?やってるのか不安な店だぞ?そんなところに客が来たがるか?こっちから宣伝するより口コミで広がったほうが客の反応はいい。ケーキが美味しいって認めると広まるのは早い。凛のケーキはちゃんと認めてもらっている」



こっちから呼び込むよりお客さんから広めて来てくれたほうがいい、か。


光さんはあの食事の中に入れ込んだだけだ。


大きな宣伝はしていない。


そうだよね。


お客さんが美味しいって言ってくれたから、また来てもらっているんだ。



「ん?なんだ?実感したか?」



「………………はい」



「そっか。遅めの実感おめでとう。蓮は立ち直れ。なんかウザい」



まだウジウジしてたのか。



「だって、会う回数少ないし。ミンエイばかりじゃん。アイツばかりズルいだろ?なぁ?なぁ?そろそろ交代させようぜ。ミンエイもそう思っているはずだ」



「ダメだ。ミンエイも学ぶことがある。あと誠也が怒るぞ。あいつはコミュニケーションを学ぶ必要があるだろ」



「ミンエイも大人になったと思うぞ。どっかの息子の世話をやり遂げただろ。心の中じゃ、腹黒いこと考えてたはずだけど」



「仕事は仕事。プライベートはプライベート」



「海はいいのかよッ!!アイツ、両方じゃん!」



「海とお前は別だろ。何言ってんだ?」



「同じだろ!!」



まあまあ早く食べて下さい。


午後もあるんだから。


早く食べないと営業時間になってしまいますよ。



「蓮、お前は仕事に集中しろ。店長に怒られたらしいな。最近、気が抜けてるって。表側の仕事を疎かにするな」



おや?


何かあったのか?



「んなこと言ったって」



「客が付かなきゃダメだろ。大事にしろよ」



………………。


だんだろうか。


私だけだろうか?


光さんが叱る姿を見ていると、そっち系の偉い人………………


うん、言わないでおこう。


ピッタリですね!なんて言えない。

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