第442話
宣言したのは分かったが、大塚さんにはなんて言ったのだろうか?
ただ、断ったと言ったのだろうか?
「美香。あまり海をイジるな。コイツ、そういうの慣れてないから可哀想だろ」
「慣れさせるのも大事でしょ。ドキドキハラハラする経験も必要だと思うけど。」
光さんが美香さんに諫めてもあまり効果はないみたいだ。
「なんだっちゃ。あんたの嫁さん怖いっちゃよ。気配、分からんかった。全く。なん?一般人なん?おかしいっちゃ」
「美香は一般人だぞ。それは確かなことだ。ただ、少しお茶目なところがある」
「お茶目?辞書持ってこようかぁ?お茶目って表現合ってるんかぁ?」
美香さんが聞いていたのは分かったし、海が宣言したのは分かったけど。
一番大事なこと聞いてない。
大塚さんにはなんて言ったのか。
「海、あなた大塚さんにはなんて言ったの?」
「嬢ちゃん、それ聞いちゃうん?なんで聞いちゃうかなぁ。美香さんよりエグいって分かっとる?」
そう?
その反応だと何かマズイのかな?
大塚さんは今のところ平気そうだけど。
あっ、プルコギ………………もうない………………。
海のことを話していたから、プルコギ少ししか食べてなかった。
しくじった………………
「やっぱ、男は堂々と告白するのがいいの!ナヨナヨするもんじゃない!いい!?何事も素早く行動する!」
「なん!?なんか、トゲトゲしいっちゃっ!ナヨナヨしちょらんよッ!希にはちゃんと話ちょる」
「おや?それは、君は俺の女だッ!的な感じ?ダサい」
「言ってないっちゃッ!」
なんか、馬鹿らしくなってきた。
私は食事に集中しよう。
黙々と食べ出しデザートまでしっかり食べる。
あとは麦茶を飲み食後の休憩だ。
片付けは光さんと美香さんでやってくれるらしい。
「ふーっ、今日はさすがに疲れたねぇ。忙しかった。椎名さんは大丈夫?ずっと立ちっぱだったじゃん」
「うん、疲れた。ずっと注文されていたから。あれだけ一気にお客さんが入るとああなるよね。大塚さんが手伝ってくれて良かったよ」
「どういたしまして」
「海のところに泊まるの?」
「うん。お世話になるつもり。お泊まりだってはしゃいでるよ」
「へ〜ぇ」
どっかの誰かと一緒で色々準備されてないよね?
ちょっと怖いぞ。
亜紀がやればそれほどじゃないけど、海がやれば少々恐怖を感じる。
なぜだ?
「こっちの部屋は何も揃ってない感じじゃないの?」
「揃えたらしいよ。家具一式。美香さんが隣でアレにしなさいコレにしなさいって言われながら」
美香さんは、海の母親みたいだな。
「そう。それなら大丈夫だね」
「うん。安心して寝られる」
美香さんも海の暮らしが心配なのだろう。
床の上でも平気で寝られる人だから。
「希、家に帰る。はよ〜帰らんと美香さんにもっと絡まれる!」
海はいつでも出られます!という感じでドアの前で立っていた。
「あっ、うん。椎名さん、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
海は大塚さんの手を繋ぎ出て行った。
なぜここで手を繋ぐ?
そんなにここから離れたいのか?
「はぁ、若いっていいよねぇ。あの2人を見てるとそう思う。というか、海君が初々しい感じがいい」
「美香、アイツも必死でやっているんだ。アドバイスもいいが、アイツに合わせてやらないとダメだろ」
「あら?合わせてあげてるでしょ?希ちゃんも、やられっぱなしじゃなさそうだし。今日の夜はどんなことになるのか………………若いっていいわねぇ」
「………………そうだな」
あっ、光さんが諦めた。
「凛、俺たちも帰るよ」
「うん」
「じゃ、帰るねぇ。あとは頑張れ」
お父さんはヒラヒラと手を振りながら出ていく。
「おう、ありがとな。気をつけて帰れよ」
私は一礼してから出ていく。
家から出て駐車場に向かうお父さんはとすでに車に乗り込みエンジンを掛けていた。
車に乗ると、生暖かい空気を感じる。
これから涼しくなるだろう。
車は走り出し国道に出る。
「今日はお疲れさま。ひと段落だねぇ。これ。定期的に入るようになったら従業員増やすべきだね」
簡単には増やせないのでは?
人件費って大変らしいから。
毎日忙しいなら増やしてもいいと思うけど。
まぁ、判断は光さんだから。
………………。
大塚さんも戦力に組み込んでそうだけど。
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