第441話
お店に戻るとお客さんの姿はなく片付けが行われていた。
もう終わったらしい。
「光さん、ご飯できました」
「そっか、んじゃ先に食べるか。洗い物は終わってるから、テーブルの片付けは明日でもいいか。みんな、家に行くぞ。夕飯だ」
洗い物は終わっていたのか。
あとは飾り付けとテーブルの位置かな。
「椎名さん、お疲れ様!いやぁ、無事に終わったねぇ。良かった良かった」
「うん、お疲れ様。すんなり帰ったんだね」
「なんか、カラオケに行くとか言ってた」
へ〜ぇ、まだ続くんだ。
「お腹空いちゃった」
「いっぱい作ったからたくさん食べてね」
「ありがとう」
大塚さんの様子は至って普通だ。
逆にそれが怖いな。
「あ〜、疲れたぁ。こんなん、1回でいいっちゃねぇ。ニコニコし過ぎてピクピクしちょるん。辛いわぁ」
海は大塚さんの後ろから抱きつく。
大塚さんはそのまま歩き出す。
えっ?
歩き難いよね?
そのままでいいの?
「いい写真いっぱい撮れた。あとで編集して送ってあげないと。凛ちゃん、夕飯の準備ありがとう」
「いいえ、勝手に冷蔵庫の食材を使っちゃいました。すみません」
「いいよ。気にしないから。光から許可もらってるでしょ?」
「はい」
「よし、食べに行きましょう!お腹空いちゃった。食べる人を見てるとお腹が空くよね」
みんな、家に移動して服を着替えてからダイニングに入った。
「うわぁ、美味しそう」
大塚さんは目をキラキラと輝かせた。
「冷蔵庫の食材、遠慮なく使ったみたいだな。分厚いステーキ肉が、薄くなっちまって。よく切ったな」
「メイン料理が肝心だからね。ステーキだと足りないから。プルコギにしてみた。野菜と一緒に食べてね。冷やしトマトもあるよ。お酒のつまみにもなるし。エビマヨもあるよ。オクラと人参と大葉和えとか」
「短時間でよく作れたな」
「凛も手伝ってくれたからね」
ダイニングテーブルだと椅子の数が足りないからリビングのテーブルの活用。
ダイニングテーブルには光さんとお父さんと海が座り、美香さんと大塚さんと私はリビングテーブルの周りを囲うようにして座る。
「このお肉凄く柔らかい。とろける」
大塚さんは早速プルコギを食べたらしい。
そりゃ柔らかいでしょうね。
見た目からしてそんな感じだったもん。
「ねぇ?さっき、紹介されていたけど。大丈夫だったの?まさか、あの場所でねぇ。びっくりしちゃった」
美香さんは食べ始めてすぐ、海の話題に触れた。
どうやらその場面を見ていたらしい。
「あぁ、大丈夫ですよ。海さん、しっかり断ったので」
「彼、意外と人気あるのよねぇ。なぜかしらねぇ」
えっ?
人気あるの?
驚いてエビチリをお皿の上に落としてしまった。
「おぉ、その人たちはなかなか鋭いですね。でも、海さんは断ると思いますよ」
「凄い自信。まぁ、あの様子だとそうでしょうね。重い………………間違えた想いっていいわね!」
美香さん、修正したけど遅かったかも。
重いって言っちゃってるからね。
「お断りされた子、頑張ったらしい。付き合ってる子いないならお試しでもいいからお付き合いお願いします!って。ガッツがある」
美香さん、どこまで聞いてたの?
「そしたら、ハッキリ言ってたよ。結婚前提でお付き合いしている人がいるから無理って。言ったよ!あの子、言っちゃったよ!!って」
これは全部聞いてたな。
美香さんはバシバシとソファーの座面を叩く。
お酒飲んでないのにテンション高いな。
「海君!!他人に宣言しちゃってバカだね!!」
海に向かって箸を突き出す。
海はポカンとした表情で美香さんを見て、何を言われたのか気づいたのか勢いよく立ち上がった。
「ちょッ!!どこまで聞いてたん!?」
「全部。だって、コソコソ連れて行かれるから。なんだ?って思ったの。あの子、可愛かったね。あの子、君目当てで来る子だったよ。意外とモテるよね」
意地悪な人がここにいる。
ニヤニヤと笑う美香さんは楽しんでいるらしい。
いい大人がこんなことしていいのかな?
「………………嫌な顔しちょる」
「だって、面白いから」
「………………」
海も美香さんに引いてるらしい。
堂々とした態度で言ってるから尚更だろう。
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