第434話
美香さんは何度も角度を変えながら写真を撮り、撮った写真を何度も確認しながら何枚も撮る。
ブツブツ独り言を言っているが、しっかり聞こえている光さんは凄いと思う。
照明の角度の調整を美香さんに言われる前に行うのだ。
そうして撮った写真パソコンに入れ込み、加工まで美香さんが行う。
「海君、いい?何度も言うけど、こういうところの色も明るさをプラスしてね。ボヤけていたら修正して!料理にボヤけはいらないから。ピンとがあってないとダメなの」
「色?えっ?暗いっちゃ?えっ?」
美香さんは海に写真加工の仕方を教えているが、違いが分からないらしい。
これは苦労するだろうなぁ。
「凛のメニューは明日からだ」
「えっ?そんな急にですか?」
「写真加工は今日中で終わる。俺も作れるし。タイミングも明日がいいだろ。月曜日だし」
土日じゃないんだ?
私が作るんじゃなくて光さんが作るし光さんのお店だからタイミングはいつでもいいけど。
「新商品っていうポップは?」
お父さんはそう言うと光さんは顎クイを海に向けてやる。
「えっ!?海にやらせるの!?」
「何度かやらせているから初めてじゃない。美香が最後に見るから大丈夫だ」
「修正は毎回何回やるの?」
「6回くらいか?毎回、泣きそうになってるぞ。美香も言い方キツイからな」
「例えば?」
「不味そう。食べたいと思わない。このデザインにした意味は?とか」
「あ〜、うん。海なら大丈夫でしょ」
「表の人に言われると打撃力が強いらしい」
「慣れだよねぇ」
「慣れだな」
最後は慣れるしかないに収まったらしい。
チラッと海を見ると、頬が引き攣っているのが見えた。
あれは何を思っている顔なのだろうか?
「これ、俺が作ったヤツだ。凛に確認してから出そうと思ってな。違いあるか?」
目の前に置かれたのは光さんが作ったスイーツだ。
見た目は私が考えてものと同じだ。
チョコの光沢とホワイトチョコソースの注ぎ方も同じ。
半分に切り層の順番も同じだ。
そして味の確認。
スプーンで一口分すくい食べてみる。
「チョコ尽くしで、チョコ好きには堪らないだろうな」
「糖分摂りすぎて健康診断に引っかかりそうなんだよね。光もそうじゃない?」
「あ〜、まぁ、一日の摂取量ではなかったな。凛もそうだろうし」
今まで食べたことがない量をいっぱい食べたから体調もおかしくなったのは本当だ。
当分、チョコはいいかな、と思っているが食べるんだろうなぁ。
うん、味は一緒だ。
サクサク食感からなめらか食感まで一緒だ。
「確認しました」
「よし、これで出すぞ」
「よろしくお願いします」
「バイトの日、自分のが売れるのはしっかり見とけ。お客さんの反応もだ。そこで判断しろよ。成功したのか失敗したのか。もし、失敗したら最初から見直しだ」
目の前で食べている姿を見られると言われると緊張してしまう。
それを何度も光さんは経験しているんだから凄いな。
お父さんはお店がないから人から聞いたりネットで見たりするらしいけど。
ネットのほうがキツイこと書かれているから参考になるとか言ってたな。
メンタル強すぎて羨ましい。
「誠也も食べろ。娘の初物だぞ」
「凛が作った物食べたから。あと、さっきの会話忘れちゃった?」
「運動しろ。ランナーマシンで2時間くらい走ってろ」
「そんなに走るの嫌だよ。有酸素運動が大事って言われているけどさ。何事もちょうどいいってもんがあるでしょ?」
お父さんはたくさんチョコを食べているからね。
仕事先でもチョコ特集をやっているらしい。
その余ったチョコが家の冷蔵庫に入っているのだ。
さすがにこの状況はヤバいと思い、お母さんの職場に配ったり真理亜にあげたりした。
半分は減ったと思う。
あとは、大塚さんにあげよう。
私が作った失敗作もあるんだよねぇ。
それの処分もあるし。
ニキビがまた増えそうだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます