第430話
車に乗り込み発進してすぐお父さんは話出す。
「凛に黙っていてごめんね。真理亜ちゃんの見張りの件」
見張りとは真理亜の様子を見るために、部下を忍ばせたという件か。
現役高校生でもないのによく受かったものだ。
「真理亜の護衛というより様子を見るためなんでしょ?」
「そうだね。凛も思っているかもしれないけど、真理亜ちゃんは適応力が高いから。最初はそんなことなかったんだけど、周りにいる人たちがほぼ全員こっち側だからね。影響しちゃったんだよね〜。だから、心配して部下を大学に行かせた。表側の生活に支障はないか、ちゃんと馴染んでいるのか、友達はいるのか、会話にちゃんと混ざっているのか。何かあったら報告するように言っているから、大学での過ごし方はだいたい知ってる」
「お父さん的にはどうなの?」
「さっき話したみたいにズレちゃっているんだよね。周りから見れば誰でも気づくよね〜って感じだけど。大学の外に出れば番犬がいるし、表の子と一緒に遊びに行くってことも少ない」
何か食べに行くならみんなで行くより個人で行ったほうが楽なのだろう。
食べる量も凄いだろうし。
「裏の子じゃないから感情は豊かだからね。違和感はないらしいけど。その男がもっと押してくれたらいいのに。適度なお付き合いより、ガツンと行かないとダメだと思う。なんせ、裏を相手にしている子だから。切り替えしちゃってるし」
「いつから切り替えが出来るようになったのかな?」
「いつからっていうか、段々と身についたものだと思うよ。すんなり出来るから凄いよね。希ちゃんもそうだけど」
大学での過ごし方は報告されているから、何か異変があればすぐに動けるはずだけど。
人の心というものは複雑だから、どうこうするものではない。
真理亜が気に入らないならそこまでだ。
「真理亜ちゃんも、もう少し近寄ってくれたらいいけど。今のままじゃ無理だろうなぁ。だから、風間も余裕な感じなんだろうね」
余裕なのか?
めちゃくちゃ睨んでいたけど。
余計なこと言うなって顔してたけど。
家に着くとケイが珍しく玄関のところに寝転んでいた。
そして、にゃーんと鳴く。
にゃーんと鳴いたあとに前足で靴をフミフミした。
なんだこの可愛い生き物は。
スマホを構えて連写。
動画もバッチリだ。
「こんなことするの初めてじゃない?玄関先でやったことないよね?余程甘えたいのかな」
お父さんはケイの頭を撫でる。
最近、ケイと遊んでなかったかもしれない。
試作品作りで忙しくて、いつもより構ってなかった。
私はケイを抱っこしてリビングに入る。
ソファーに座ってケイの背中やお尻を撫で回す。
すると気持ち良さそうにグデーンと体を伸ばした。
「あら?珍しい。そこまで無防備なのは見ないね。最近、よく鳴くなって思っていたけど。構ってアピール大胆になってきた感じ?本を読んでるときもワザと本の目の前に座るの。前より甘えん坊さんになったように思えるんだけど」
お母さんが後ろから覗き込むようにケイを見る。
「あれじゃないかなぁ。ずっと博さん家にいたから。いつも家には誰かしらいたし、構ってもらえてたから。こっちだと日中は誰もいないことが多いでしょ?」
お父さんの話は当たっていると思う。
あっちはいつも遊んでもらっていたはずだから。
「なるほど。確かに日中は誰もいない。ケイは寂しいのねぇ。でも、そのうち慣れるでしょ。今までそうだったんだから」
お母さんは大丈夫大丈夫と言いながらキッチンに行った。
なんだこの可愛い生き物は………………
気持ち良さそうな顔をして………………
可愛い………………
ツンツンなときが多い子がデレデレだ。
感激すぎて思わず亜紀に写真と動画を送ってしまった。
この可愛さを誰かに見てもらいたい。
うちの子可愛いでしょ?
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