第428話

お父さんの発言は光さんもびっくりなものだったらしく、お皿を盛大に床に落とした。


パリーンッ!パリーンッ!と割れる音はたくさん聞こえる。


これはトレーごと落としてしまったのかもしれない。



「やっちまった………………マジか、いや、これもマジだが……そっちもマジか。どうしてくれんだよ。あ〜、こんなに割っちまうのは久々だぞ」



「光、プロ意識ないよ。何事も動揺しちゃダメでしょ」



「お前がとんでも無い発言をしたからだろ。お前のほうがプロ意識ないだろ。拗らせるようなこと言いやがって」



「お見合いとかどうかなって、あっ、今はアプリだっけ?」



「…………それ、自分の娘に対してはどうなんだ?」



「はぁ?そんなのやらせないよ。まだ早い。危ないじゃん。変な男に会ったらどうすんの?怖い思いさせたくない」



「それと同じことだ。もっと穏便にしろ。刺激が強すぎると暴走するだろ」



「でも、とびっきりの意地悪じゃないかな?真理亜ちゃんが言う悪女になれると思うけど。コイツらの目の前でイチャイチャしてる姿を見せるとか、彼氏のことを優先するとか。恋人として当たり前のことを見せるだけでもいい影響になるはずだけどなぁ。お手て繋いで街中を歩くだけでも効果的。列に並べとか、あれ買ってこいだけじゃ薄いからね。雪は喜んで並ぶらしいから、風間は問題外だし。行動で示さないと鈍い奴には分からないよ。何事も体験だよ!た・い・け・ん」



光さんの表情から察するに【うわぁ、コイツ本気で言ってるのか。本気で引くわ】と思っているだろうな。


お父さんを見る目が軽蔑している目だもの。


いや、まぁ、お父さんが言ってる意味も分かるけどさ。



「あとは、真理亜ちゃんのことを考えてってこともある。亜紀君や雪やら風間やら柚月やら海やら双子やらミンエイやら、殆ど裏関係者だよね?大学にはこんな危ない男たちはいないと思うけど、区別はしちゃってるわけだよ。真理亜ちゃんは大学で必死にお勉強してるみたいだから、声を掛けられても全く気づいてない。うん、眼中にないのは非常によろしくないわけだよ。俺の言ってること分かるかな?」



「おい、声を掛けられても全く気づいてないってなんで分かるんだ?誰だ?どこの誰を使った?大学に忍ばせたのか?」



「細かいことは気にしないでよ。光はいつもそうなんだから」



「医大に通える頭があるヤツがいたのか、うちに」



光さん、違うところで驚かないでよ。


そうじゃないでしょ。



「冗談で言ったら、受かっちゃったらしい。言ってみるもんだよね。違う方法で準備してたんだけど、そっちは中止にした。受かった本人も凄く驚いてたよ。まさか、受かるとは思ってなかったらしいから。まぁ、自然な感じで行けたから良かったよ」



「ソイツ、褒めてやるべきだな。何かあげるか。賞与がいいか?」



えっと、つまり、真理亜の様子を見ている人から聞いた話によると真理亜にアプローチをしている人がいるが真理亜は全く気づいてないってことだよね?



「いいんじゃないかなぁ。物よりお金だよね。で?思考停止しちゃってる真理亜ちゃんをどうしようかなぁ。話全く聞いてないよね?お〜い、戻っておいで」



お父さんは真理亜の目の前で手を振る。


そして、パンッと両手を軽く叩いた。


その音で気づいたのか何度も瞬きをする。



「気づいた?おかえり。そんな思考停止するほど驚かなくても」



「彼氏………………彼氏ですか?えっ?彼氏?」



「あれ?まだダメだった?」



何を言われたのか理解していないのでは?


または、お父さんに言われたからびっくりしたのでは?


真理亜の様子は確認できたが、問題は風間なのではないだろうか?


私は確認したくなくてあえて見ないようにしてるけど………………


お父さんも光さんも風間のことを見ないようにしているらしい。


………………。


どんな表情をしているのか気になる。


好奇心というか………………


見ちゃいけませんって分かっているんだけど見たい。


絶望の顔だったら凄く見たい。


見ちゃいけませんって思えば思うほど見たくなるんだよなぁ。


で、見る。

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