第426話
大体の料理が出たあと最後にと出されたのは私が作ったスイーツだ。
それを見て驚きテーブルをバンッと叩いてしまった。
私が作ったものはまだ試食まで進んでない。
「おい、このよく分からない物体はなんだ?」
「ゼリーだ。まぁ、何も言わずに食え。んで、紙に書け」
風間はツンツンとスプーンで突いている。
ツンツンしないで食べろ。
出されたものは食べるしかないのだ。
私の前にも自分で作ったスイーツが置かれている。
………………。
真理亜のメモを見るのが怖いな。
モグモグと食べながらペンを動かす手はなかなか止まらない。
あれはいっぱい書かれているんだろうな。
私もスイーツを食べるが………………
マズイわけではないが、美味しいというわけでもない。
つまり、お店で食べる味ではないということだ。
何度食べてもその味しかしない。
家庭なら問題ないけど。
全ての料理を食べ終えた後は食後のコーヒーでリセットだ。
「どれも美味しかったです。ご馳走様でした。食費が浮いて助かりましたぁ」
隠すべき言葉がダダ漏れであるが、真理亜の場合は納得の食べ方をするから。
丸ごと出された料理をペロリと食べてしまうのだから。
他のみんなは次から次へと来る料理のために調整しながら食べているのに、真理亜だけはそんなのお構いなしに食べる。
「ビッシリ書いてくれたんだな。ありがとう」
光さんは真理亜のメモ書きを手に取る。
「汚い文字ですけど、読めるはずです!」
「あぁ、読める。んで、風間のは………………お前、案外ちゃんと書いたのか!真面目だな!」
風間は口で言いながらもしっかり書いていたらしい。
「俺をなんだと思っているんだ?どっかの誰かと一緒にするな」
「へ〜ぇ、本当にマトモなこと書いてる。偉いじゃん。ちゃんとしてくれるのは評価してあげるよ」
「何目線で言っている?あんたに評価してもらってもしょうがない。そうして欲しい奴にしてもらわないと意味ないだろ」
「哀れだね」
「おい、喧嘩売ってるのか?」
「間違えた。頑張り屋さんだねぇ」
「………………」
風間が弄られているのを見てるの結構楽しいかも。
風間はお父さんに弱いらしい。
隣に座っている真理亜は興味ないみたいだけど。
ゆっくりコーヒーを飲んで完全にリラックス状態だ。
「温度差あるな。こんなに温度差あるのも凄い。あのチビ助を押し退けてまで来た風間もどうかしてるが………………それを何事もなく無視をしている真理亜も凄い。コレ、どっちも脈ないだろ。なんで分からないのかねぇ。それも若いからか?」
あっ、ハッキリ言ってしまった。
光さんの発言にお父さんは「あちゃー」と言葉を漏らす。
「なぁ?今更だが、コイツもそうだがこのままでいいのか?中途半端なままにしていたら、どっかで壊れちまうぞ。そうなったら厄介だ。処分対象になるからな」
光さんは早めに面倒ごとをどうにかしたいのだろう。
真理亜は飲み掛けのコーヒーをテーブルに置き光さんを見た。
「別に何も考えないで一緒にいるわけじゃないですよ。私は悪女になった気分でいます」
「ん?」
真理亜の悪女発言に光さんは傾げた。
「悪女?どこがどうなって悪女になったんだ?」
「やはり、罪は罪です。チャラになりませんよ。駄犬が凛ちゃんにしたこと、風間君が凛ちゃんにしたこと。駄犬が私にしたこと、風間君が私にしたこと。表だとチャラになりませんよね」
「………………俺は何を見た?今、真っ黒な影を見たような気がした」
いや、気のせいではないです。
今の真理亜の表情は真っ黒ですね。
悪い顔をしてます………………
「あらら、日に日に増してるね。影響してるんじゃないの?君たちがいることで」
お父さんは何か含みがある表情で風間を見た。
風間はそれに応えず黙って視線を逸らす。
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