第423話
テイクアウトが出来ないならここに連れてきてしまえばいい。
うん、まぁ、それはいいけどさ。
海の訛りの件を大塚さんに話したところ、大塚さんが海に言ったらしい。
そして、海がその流れで光さんの料理がテイクアウト出来なかったと話して、なら行ってしまえばいいとなった。
バイトの日、お店に行くと大塚さんがいたからびっくりした。
話を聞くと海と一緒に来たらしい。
ただいるわけにもいかないので、皿洗い担当にされていた。
接客はさせないで、ひたすら皿洗いに徹していた。
それは私のため。
どう考えても大塚さんのほうがバイト経験豊富で接客慣れしている。
テキパキと動かれてしまっては私が動かなくなるかもしれない、とのことだ。
あと、3人もいらないって言われた。
夕食時が過ぎるとお客さんも少なくなり、3組になったところで今日は上がりとなった。
そして、当たり前のように奥の部屋へと通され、当たり前のようにテーブルには2人分の夕食が準備されており、当たり前のように大塚さんの隣に海が座り私は向かい側に座る。
私は終わったが海はまだ仕事中である。
これは、もう家に帰ってますってくらい寛いでないかな?
大塚さんをじっくり見つめないでくれないかな。
私がいないときにやってほしいな。
3組のお客さんがいるから、戻ってよって言うべきかな。
「いや、お前は早く持ち場に行けよ」
「んなぁ?嬢ちゃん、なんか機嫌悪いん?」
「………………花畑野郎。3組いるんだけど」
「常連さんだっちゃ。帰るのおそーよ」
それでも戻れよ。
お給料はしっかり発生しているのだから。
「光さんから呼ばれると思うよ」
「そんときにいきゃぁいいんよ。なんかありゃ呼ぶっちゃ」
「………………」
それでいいのか、お前は。
「美味しいか?」
「美味しいよ。おかずも美味しいけどご飯が凄く美味しい」
「炊飯器じゃないからなぁ。土鍋で炊くんよ。こだわりらしいっちゃ」
「土鍋?このお店の雰囲気だと土鍋かも。ピッタリ!」
「そうっちね。古民家を改修しちょるから雰囲気は合ってる。でもなぁ、難しいんよ。炊飯器ならボタンを押せばええけど、土鍋は見ないといけんし」
土鍋を見るのは光さんだけどね。
私や海では無理だから。
「手が冷たくないん?ずっと皿洗っててん」
「大丈夫です。素手で洗っていたわけじゃないし。皿洗いはバイトでやったことあるから」
「そうけ?でも、手袋やってても冷たさはあるんよ」
海は大塚さんの左手を摩る。
なんだろうか?
このどうしようもない違和感。
「大丈夫ですって。ずっとでも途切れ途切れですよ」
「やっぱりテイクアウトにしとこうかぁ。家でゆっくり食べるほうがええかも」
結局は持ち帰りになるらしい。
「ねぇ?そのテイクアウトにピザはOKなの?もし、ピザが食べたいって言われたらピザにするの?」
「嬢ちゃん!!なんで、そんな意地悪な質問するん!?酷いわぁ。ホント酷いっちゃよっ!」
「なるほど。ピザは嫌なんだね」
ピザが食べたいと言われても買わないらしい。
こんなにアピールしているから、ピザでもテイクアウトするのかと思ったのに。
だが、そこら辺は流されていないらしい。
「椎名さん、知ってた?ピザはダメだけどピザまんとかピザパンは食べられるんだよ」
「えっ?そうなの?」
なぜだ?
味が嫌になったわけではないの?
「ピザのイメージを変えたらいいのでは?ピザまん食べられるのなら大丈夫でしょ」
あの女の好物みたいなイメージがあるからだと思う。
大塚さんが頼んだら食べると思うけど。
………………。
話を振っておいて申し訳ないけど。
正直、どうでもいい。
ただ、思うことは海が邪魔だなぁ………………
大塚さんと話をしたいところだけど。
海がいると話しにくいなぁ。
だから、私は海を見て「邪魔だなぁ」と呟いてしまった。
それを聞いた海は目を見開き驚いた表情をしたあと、私から目を逸らした。
いや、何も見てない振りは無理だよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます