第409話

次の日。


真理亜は朝ご飯を食べるとゆっくりお茶を飲む暇もなく帰って行った。


何やら、期間限定のプリンを買いに行くらしい。


誰と行くのか聞くと駄犬と言った。


駄犬もそれなりに頑張っているらしい。



「凛ちゃん、よく頑張ったねぇ。なんだか、凄く勇ましくなった?」



何も勇ましくなっていないが………………


博さんがケイを連れて来るとは思わなかった。


てっきり佐々木さんだと思った。


ケイは恐る恐る家の中を歩き回る。


家の中をしっかり確認しているらしい。


久しぶりすぎて忘れちゃったかな?


ネコは警戒心が強いからな。



「もうウチのネコになっちゃうんじゃないか?ってくらい懐いちゃったからさ。別れるのが辛いなぁ」



「冗談を言ってる場合ではないですよ。いや、思ってないことを言わないでください。ケイはうちのネコですから」



「ハハッ、ごめんごめん。んで?足はどうなの?」



「リハビリすれば大丈夫です」



「そっか、そっかぁ。なら、リハビリついでにお出かけしようか。麻矢さん、凛ちゃんとお出かけしてきま〜す」



えっ?


どこに?



「は〜い。どうぞぉ」



お母さんも軽く返事しちゃうのね。


そうして連れ出された。


歩くわけではなく車移動。


リハビリにはならないが、お出かけは気分がいい。



「凛ちゃんさぁ、驚かないで聞いてほしいことがあるんだけど」



「えっ?なんですか?悪い話は嫌です」



「う〜ん。悪い話かもしれないし良い話かもしれない。本人たちは良いから良い話にしようか」



本人たち?


春さんの話だと思ったけど、どうやら違うらしい。



「海と希ちゃんの話なんだけど。2人、付き合うことになったから」



「………………はっ?」



着き合う?


突き合う?


付き合う………………


ハハッ、まさかね。


そんなわけ。



「何がどうなってそうなった?えっ?なんで急展開?この短期間でなんでそうなった?」



「凛ちゃん。恋ってね、期間は関係ないよ。急に進展するものだからさ」



「博さんがソレを言っても全くタメになりません。悪いことを言われてるみたいに聞こえます。そんなことより、本当ですか?」



「そんなこと………………酷いな。結構心にグサッてくるんだよ。2人の関係は本当だよ。凛ちゃんに知らせてあげようって思っていたけど、入院しちゃったしさ。退院してからでもいいやって。危険性はないから。今のところは。希ちゃんも海とうまく付き合ってくれてるよ。海も今のところは大丈夫だし」



そういうのは慎重に行うべきではないのか?


大塚さんより問題なのか海だ。


こんな時期に発展するなよ。



「向かってる場所は2人がいる場所ですか?どこにいるんですか?」



「別荘だよ。あっ、春は別荘にいないからね。あそこは佐々木と数人の使用人とあの2人だけ」



「それって、2人っきりには出来ないと考えた結果ですよね?」



「う〜ん、まぁ、うん。そうとも言える」



そうとしか言えないでしょ。


見張りを置くということは不安定だということだ。


自分で線を引いていたのに、それを自分から消したってことは大塚さんを認めたことになる。


別荘に着くと挨拶もそこそこにして大塚さんと海を探す。



「2人はどこ?」



「う〜ん。部屋だと思う」



「どこの部屋ですか?」



「………………海の部屋かなぁ」



目がキョロキョロしてるぞ。


博さんは何かを隠しているのか?


まぁいい。


本人たちに聞けばいいだけだ。



「凛ちゃん。ちょっと落ち着こうよ。その足で歩き回るのはやめたほうがいいんじゃないかな?」



博さんの話も無視して海の部屋の前に着きドアを思いっきり開いた。



「海!あなた、はな………………ッ」



「あ〜、こうなってるよねぇ。だから、落ち着こうって言ったんだよね」



私の後ろで博さんがため息混じりで言ってるのが聞こえる。


いや、ちゃんとはっきりと言ってよ。


まさか、こんな早い時間からヤっているとは思わなかったから。


開いたドアはゆっくり閉じていく。


私はそれを黙って見ていることしかできなかった。

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