第407話
退院日、お母さんが来て荷物を整理してくれた。
私はベッドの上に座りながら松葉杖を眺める。
これを使わない日はいつになるのか。
リハビリはしているが、今のところは足に力がうまく入らないというか。
動くけどぎこちない感じだ。
支えがないと歩けないし。
「よし!んじゃ、凛!帰りましょう!」
「うん」
松葉杖を使って立ち上がる。
「凛ちゃん。家でも足首を回す運動をするんだよ」
「大丈夫です!私がしっかり見てますから!」
矢島さんは私に言ったのに、お母さんが反応してるし。
私はコクリと頷くだけだ。
荷物を車に乗せる時も車に乗り込む時もお母さんはとても上機嫌だ。
それは運転中になるともっと上機嫌になった。
「今日の夜ご飯はお寿司!うに、いくら、かに!奮発しちゃったの」
「お父さんいないのにいいの?」
「帰って来たらまた頼めばいいでしょ?いないからって食べるなとは言われてないし。他に食べたいものある?」
「ラーメン」
「いいね。出前しちゃう?お家で作るより絶対に美味しいから」
「でも、そんなに食べられないよ」
「んじゃ、明日とか。お昼にどう?」
「うん」
心配なことがある。
今、家にはお母さんだけだ。
お父さんはまだ病院だし、ケイはまだ別荘にいる。
まぁ、ケイは明日には帰ってくるけど。
冷蔵庫の中身。
買いすぎじゃないといいけど。
ケイは猫だし人間の料理は食べられない。
お父さんが退院するのはまだ少し先だし。
「お母さんは今まで何を食べていたの?」
「えっと、1人だったから簡単なものだよ。お茶漬けとかラーメンとか。うどん、そば、冷凍パスタ。コンビニお弁当。最近分かったことがあるの。コンビニのお弁当美味しいって。あれには驚いたよ」
ザッ、1人暮らし!みたいな食生活だな。
でも、1人だからしょうがないが………………
「あのさ、現在の冷蔵庫の中身は整理されてる?」
「ん〜ふふっ。誠也にも言われちゃったけど、終わったことは気にしない!やっぱり、家族一緒にご飯食べないとダメだよねぇ」
あっ、この様子だと買い溜めしたな。
家に着くと手を洗って真っ先に冷蔵庫の中身を確認した。
これは………………
「お母さん………………どこのスーパーに行ったの!?なんか、全部がデカイ!!」
肉のパッケージには2キロと表示されている。
卵はいつものパックじゃない。
1パックがもう一つくっついている。
パンも2斤………………
うちの冷蔵庫って結構大きめだけど、食材が大きいと小さく思えるな。
「それがね、友達に誘われて会員制のお店に行ってみたの。そしたら、どれもこれも大きくて!みんな美味しそうだし。冷凍すればいいかなって。お寿司もそこで買ったの!凛の退院が夕方だったから良かった」
平べったいデカいパックか。
恐る恐る覗く。
そして、小さく頷くながら冷蔵庫を閉じた。
今日は2人しかいない。
なのに、この量を食べろと?
寿司は回転寿司とかだと思ったのに。
考えが甘かったようだ。
「流石にこの量は食べられないよ。生寿司だし今日中に食べないと。誰か呼ぼう」
「やっぱり?ちなみに、寿司だけじゃなかったりしちゃったり」
それを聞いて速攻で真理亜に連絡をとる。
訳を話すとすぐに来てくれると行ってくれた。
家の夕飯もあっただろうに。
食費が少しでも浮くから嬉しいとかなんとか言っていたけど。
「他に何を買っちゃったの?」
「サラダとか。チキンとか………………」
テーブルの上に大きめの布があるのだが………………
それを捲ると冷蔵庫には入らない大きさの料理が隠されていた。
真理亜に感謝だな。
うちの冷蔵庫がパンクするところだった。
真理亜が到着したのは40分ほど経った頃だ。
その間に温めたりお皿を出したりと準備していた。
テーブルに準備した料理を見た真理亜は「何人分用意してたの?」と言った。
それは私にも分からない。
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