第406話
「体を動かさないと駄目なんじゃないかな?」
………………。
それは確かにそうだが。
「ずっと書いてるわけじゃないし」
「嘘だね。学校の行事?課題か何か?」
「違う。光さんのお店で出すメニューを考えているの」
「あぁ、そっちか。飲食店やっているんだっけ?」
「うん」
「平和そうだね。風間君も平和な考えをしていたよ」
風間?
この人、風間から話を聞いたのか。
「平和で何よりでしょう。風間の考えが平和と言っていいのか疑問だけど」
「女のことで考える暇があるなら平和だと思うけど。相手は白井さんらしいね。諦めてないって凄いよねぇ。仕事はしっかりやってるからいいけど」
仕事まで影響したら言うつもりだろう。
「ここまで来て椎名さんに話したそうじゃん。みんなに許可取りは大変だねぇ。有名人でもないのに」
「あなたは、風間から様子を聞いてここに来たって感じ?」
「そんな感じ」
「不安定な時期なのに」
「今後の生活に支障が出る怪我じゃないのか確認したかったからね」
風間から話は聞いているはずなのに。
確かに、聞くと見るでは違うけど。
「檜佐木君のことも聞いたけど、見た目以上の怪我だったらしいね。絶対安静って言われたらしいから。東賀さんたちは問題ないように見えたみたい。普通に会話できるし」
「あっちの人たちとは会えないし詳しくは知らないけど、亜紀に関しては重かったらしい。無理しちゃったから。あなたより重症ってどうなの?」
本当になんで動けているのか。
「だからさ、化け物じゃないよ。そんな目で見ないでよ。悲しくなるから。本当は病室のベッドから出ちゃ駄目って言われているんだから」
そう言われているのに出ちゃっているでしょ。
本当にヤバい場合は固定具を取り付けられているはずだ。
組織がグダグダな状態でもトップが死にそうなのはマズイでしょ?
「傷口が開いたままの状態で仕事してそう。気づかないとかあるんじゃない?鈍いらしいから。服が血だらけになって気づくとか。その状態だとパックリ開いているでしょうね」
「流石にそれはないよ。そこまで鈍いわけじゃないから」
いや、鈍いでしょ。
「雪と連絡とったんだけどさ」
「あぁ、そうなの。心配していたみたいだから」
「めちゃくちゃ泣かれたんだよね」
そう。
別におかしくはないと思うけど。
「あなたが死にそうって思っていたらしいから。安心したんでしょ。近くにいないから状況が全く分からないし。学園の頃と違って頻繁に会えるわけじゃないから。あっちは表側にいるって決めたし、柚月は裏側にいるって決まっているし。それでも、連絡は取っていたんだもの。気になるでしょう」
それが理解できないと言われてしまったら、そうでしょうねって言うしかないけど。
「雪が泣くのは別に珍しいことじゃないんだよ。でも、今回は尋常じゃなかったから。ちょっと怒っていたかな。泣くのか怒るのかどっちかにしてほしかったけど。なんか、ごちゃ混ぜになっていた感じ」
「それは感情が爆発したんじゃない?ちゃんと話したんでしょ?」
「具体的なことは話してないけど。喜一の件は始末したって伝えてある」
「そう。今後も付き合うの?彼と」
「切り捨てる意味ないからね」
グズグズに泣かれるけど邪魔ではないってことか。
雪も柚月と縁を切る考えは持っていないらしいから。
近寄り過ぎることはないけど途切れることはない関係がちょうどいいだろう。
「雪と会って話したりは?」
「しないよ。雪もその気はないし。そういうところが分かるからいいんだよねぇ」
「そう。物分かりいい友達で良かったね」
「雪には話したけど日本と海外を行ったり来たりになるからね」
「………………」
それは凄く忙しそうですけど。
「今回の件で海外と揉めた?」
「そりゃそうでしょ。あれだけ派手にやれば。全部言う通りには動かないでしょ。は〜ぁ、海外に行ってる暇ないのになぁ。どっかの誰かが絶対安静状態だからさ」
それは亜紀のことを言ってるよね?
後処理は今のところジュンさんとその部下が行っているはずだ。
そこに亜紀も混ざるのだろうか?
「連絡は取れるようにしてるから、何かあったら連絡してね。そろそろ帰るから」
「分かった」
何もないことを祈るけど。
柚月は立ち上がり軽く手を振って病室から出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます