第404話

こっちに来てからお父さんと話すのは初めてだ。


熱は出すし体は怠いし声を出すのも辛かった時があったからズルズルとしちゃった。


お母さんがいたから状況は把握できていたし。



『麻矢から話は聞いているけど、体調は大丈夫かな?無理はしていないかな?』



「うん。大丈夫。熱も下がったし体の怠さも大丈夫。食欲も回復してる。真理亜がね、たくさん料理を運んで来てたくさん食べたの」



『矢島は絶対にダメって言うからね。バレる前にやってしまえばいいよね』



「凄い量だったの。業務用の調理器具とか持ってきて。ラーメンとかもあって。デザートも豊富で」



『真理亜ちゃんも我慢してくれていたからね。食べたい物が食べられないって辛いよねぇ。料理が出来たら問題ないけど。出来ないから』



真理亜が料理か………………


作っている過程で何かを食べてそうだけど。



「お父さんは?順調なの?」



『うん。大人しくしているからね。ちゃんと回復してる』



「なら、家に戻れるのも早い?」



『医者の判断だけど。そっちと違ってこっちは素晴らしい見張りがいるからさ。ちょっとでも動くと鋭い目つきで睨んでくるの。怖いよねぇ。病人相手にさ。優しくしてって感じだよ。外の空気を吸いたくなるときあるじゃん。それもダメっていうんだよ?酷いと思わない?』



………………。


それはお父さんの行いが悪いからでは?


前科がある人はそうなるよね。



「電話の件は風間のことだよね?」



『ん〜、風間だけってことはないけど。凛の声も聞きたかったし。スマホが戻ってきたからさ。真理亜ちゃんは?いる?』



「いるよ。今、紅茶飲んでる」



私も飲みたいな。


カップを見ていると真理亜が気づいて私の分もいれてくれた。



『そっか。風間は真理亜ちゃんを連れ出さなかったか』



えっ?


連れ出すつもりだったの?



「風間は諦めないみたいだけど。あれでいいの?」



『いいわけではないけど。今言ってもしょうがないし。俺たちがこんな状況だし。双子だって酷いからね。今はミンエイだけが頼りではある。一番の頼りは亜紀君だけどさ。今は怪我の治療が最優先だから。それにアメリカに行くわけだし。まぁ、凛のところに言って意見を聞くだろうなって思ってはいたから』



「話はしたけど。理解できないと言われてしまったからどう理解させようとか考えるわけではないし………………別に真理亜と風間が付き合ってほしいとは思ってないし。というか嫌だし」



『そうだね。俺も嫌だなって思うよ。最近の真理亜ちゃんは元気いっぱいだから。風間の話にも反応をするようになったでしょ?驚いちゃったよ。そんなことになっていたとはね。凛とは少し離れていたのに育っちゃうんだもん。止まるはずだったんだけどなぁ』



止まらずにそのまま突っ走ったのだろう。


本来ならここで徐々にミンエイさんも離れていくはずだったのに。


雪だけだったらまだ良かった。



「風間は野放し?」



『ん〜、野放しってわけじゃないけど。彼も大学生活はあるわけだし。ずっと見張りをつけておくつもりはないよ。ミンエイも双子も自分たちの生活があるし』



「実はあまり気にしてないってことない?」



『気にしてないというか、あの状態では無理だよね』



亜紀も風間に何かを教えるつもりはないだろうし。



「真理亜は普通に過ごしていいってことだよね?」



『もちろん。行きたいところに行っていいよ。行くなとか言わないから。そこは安心して。楽に過ごして大丈夫だよ』



お父さんはそう言うならいいけど。



「真理亜、自由にしていいって」



「う〜ん。なんかねぇ、今の現状だと別に今まで通りでいいかなって思ってはいたんだよね。私が流されなければ。というか、流されないと思うんだよね」



その自信はどこから来ているので?


なんか、表情にも出ているけど。

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