第401話
真理亜は鋭いから勘づくかもしれないけど、風間のほうが上手なのだ。
当たり前じゃないことが当たり前だと。
素質者は裏の考えが理解できる。
それは、裏に染まりやすいということ。
風間が教えたら見事に風間の言う通りに動くだろう。
「あなたから見て真理亜はどう?あなたと仲良くしている表の子と比べると何が違う?あなたはそこに惹かれたのでしょう?私たちの近くにいたことで真理亜は少しずつ鋭くなっているけど、これ以上の成長はさせたくない。線引きって必要でしょう?」
線引きはしっかりやれ。
表の裏とのラインは守るべきだ。
踏み込むつもりがないのに踏み込ませるわけにはいかない。
「お前はいいな。全て分かっていて」
「何を言っているの?全て分かっているわけないじゃない。分かっていたら、私はここにいなかったはず。こんな大怪我しなかったはず。自分を理解するのって難しい。それなのに他人もでしょう?経験したことなら分かるけど、経験したことのないものは分からない。あなたと私が今まで経験したことは一緒じゃないでしょう?全く別ものだもの。あなたが知らないものを私が知っているだけ」
「大学にいる連中の頭の中は花畑だが嫌いじゃない。平和なのはいいことだ。自分だけじゃなく他人のことまで気にするだろう?親切心だが知らないが、不利益になるようなこともする」
「あら、素敵なことね。他人に親切するのって案外難しいことだから。その人、人間味があっていいと思う。面倒だなって思ったらダメなの。そういうことは何も考えないですることだから。頭の中で色々考えてしまう私たちには難しいでしょうね。真理亜も他人に親切にできる人よ」
「ハッ、確かにそうだな。俺もお前も頭の中で考えるだろうな」
癖って抜けないものだから。
常識だと言われてもそれを理解するのに凄く時間がかかる。
そして実行するのも。
頭の中で無駄に考えてしまうのだろう。
軽はずみな行動で大きな間違いに繋がるのが裏だから。
「で?ここまで話しても考えは変わらないのかしら?お父さんのダメ出しがあったのに。もう呆れた感じ。学習しないヤツって思われてなかった?双子にやられたのにって」
人って忘れる生き物だから。
何度も教える必要があるから。
「日本にいるからな。アメリカにいるわけじゃない」
「日本だろうが、アメリカだろうが、スタートラインに立ってないでしょ?」
「立つさ」
その自信はどこから来るのだろうか。
不思議だ。
「脈なしって分かっているのに?真理亜の目の前で話しているのに、真理亜は全く興味を持ってないみたいだけど」
「聞いてるだろ。無視はしていない」
「………………」
ふ〜ん。
それは気づいているか。
「柚月からは何も聞いてないの?あなたよりマシだと思うけど」
「聞いたところで理解はできないだろう。まだ、檜佐木から聞いたほうがいい」
「あなたの立場で近いのは柚月でしょう」
確かに亜紀は表側のことも知っている。
だが、風間と同じような裏ではない。
「今の柚月に聞いても無駄だ。完成形のヤツの考えは独特だからな」
「………………そう。そんなに差があるのね」
「育ちが違いすぎる」
どちらも褒められない育ちだけどね。
何を言っても考え方を変えないか。
「アホに何を言っても意味ないか。真理亜には駄犬もや双子もいる。その人たちを押し退けて会うの?今は入院しているから会えるだろうけど」
「あぁ、そうだ。今いるヤツは若いな。他の幹部と違って荒さがある」
「ミンエイさんのこと?」
「ソイツだ。下っ端ではないが。あの東賀の部下としては荒い。あんなヤツに任せたのか」
酷い言い方。
お父さんが任せたのなら大丈夫なのに。
は〜ぁ、真理亜だからってことでしょうけど。
「ミンエイさんは、しっかりしてる。周りの状況だって細かく探っていたみたいだし。私が無事ってことは問題ないってことでしょ」
あっ、ここでそれを言う?
真理亜も少しムッとしたらしい。
でも、ここで言わないほうがいいんじゃないかな?
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