第62話

それから、順番にブースを周り気になるお店があれば試食する。


ずっと歩き回ると足は疲れるものだ。


休憩スペースにはたくさんのテーブル席が置かれていた。


しかも、休憩スペースの奥には軽食販売所も設置されている。


売れるのか?


飲み物は売れると思うけど。



「なんか飲むか?」



「うん。お茶でいい」



「分かった」



私はテーブル席に座って会場の地図を見る。


回ってないのは2階か。


それにしても、いろんな創作料理があるものだ。


面白さで考えたものから、味で考えたものまで。


大盛りメニューとかもあったな。


真理亜が喜びそう。


………………。


真理亜ってそういうのには挑戦しないのかな?


いろんな大盛りメニューがあるみたいだし。


好きなものなら案外いけるのでは?



「ほれ、お茶」



「ありがとう」



テーブルにはペットボトルのお茶が置かれた。



「次はどこ見るんだ?」



「2階。まだ見てないよね」



「ここ広いな」



「帰りにお土産買う?」



「お土産?あーっ、そういえば出入り口に販売所あったな。なんで、ブースで売ってないのか不思議だった」



「ブースで売ったら色々迷惑なことが起こるんじゃないの?知らないけど。で?どうする?買う?」



「気になったもの買えばいいだろ。なんかあったのか?」



「ロールケーキかな。プレーンの。凄く美味しかった。ふわふわの生地で生クリームもこってりしてなくて食べやすい。アレはちゃんと食べたいと思った」



「なら、そのロールケーキだな」



値段もそんなに高くなかったし、味と値段のバランスがいいと思う。



「あと、揚げまんじゅうあったよね。油で揚げたのにそんなに油っぽくなかった。あれも美味しかった」



「見た目と味のギャップがあったやつか」



「そう、それ」



あとは、お肉が美味しかったよ。


高いお肉は本当に美味しい。


是非、お店で食べたいものだ。



「2階には何があるんだ?」



「えっと………………パスタとピザとかイタリアン料理が多いかな。デザート類もあるけど」



ピザか。


目の前で作っているところ見られるのか。


クルクル回る生地とか見られるのかな?



「そろそろ行くか。帰りに土産買えなくなるぞ」



「そうだね」



ペットボトルを持って立つ。


休憩スペースから出てエスカレーターで2階に上がる。



「ここもいっぱいだな」



「手前から見ていく?」



「そうだな」



地域グルメも数多く出店しているらしく、知らない料理が見られて結構楽しい。


それに、食べたことのない味もあるからいい刺激になりそうだ。


奥に進むにつれて人も多くなってきた。


なんだろう。


この流れは………………



「なぁ?なんか、1階と同じじゃね?有名な奴でもいるのか?」



どうでしょうね。


人ではなく料理かもしれないし。


奥へ奥へと進むとあるブースだけ凄い人だかりが出来ていた。



「おいおい。下と同じくらい凄いな。何作ってんだ?」



「パエリア」



みんなに見えるように画面が設置されているから分かる。


パエリアって作るの大変なんだよね。


時間も掛かるし。



「なぁ?」



「何?」



「アレって、テレビでよく見る日向じゃねぇの?」



「………………私はよく見ないけどね」



でも、亜紀がそう言うのはそうなのだろう。


画面に映っている人はどこか日向に似ているところがあった。


あぁ、この人はお父さんのライバルか。



「もっと近くで見るか?」



「うん。でも、またこの中を突っ込むのはいいかな。最初はまだ体力があったけど」



「結構歩き回ったしなぁ」



「うん」



足を踏まれたら痛いし。


このくらいの距離でも見られるし。


問題はない。



「試食するか?」



「そうだね。食べてみる」



「並んでいるけどな」



それはしょうがない。


最後尾に並んで待つこと10分ほど。


一口サイズのパエリアを食べてみる。



「うまっ!これ、マジで美味いな。フェミレスとは別だ。やっぱ、テレビに出るだけわるわな」



「どれと比べてるの。失礼でしょう。というか、ファンの人に聞かれたら怒られるから」



周りにいる人はみんなファンかもしれないし。



「あれ?椎名さん?なんでここにいるの?椎名さんも手伝いで来てたの?」



次に行こうとした時に声を掛けられた。


そこには日向の姿があった。


日向の姿は私服姿ではなく出展者のスタッフとして服装だ。


これは、父親の手伝いで来ているのだろう。


前にも付き添いで来ていたことがあったな。



「凛。お前、あんまり驚いてないな。コイツに会ったの」



「そうね。まぁ、父親がいるなら息子もいるかなって」



なんだか親子セット売りみたいなもんでしょ。


安売りみたいな言い方で悪いと思うけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る