第58話

「お前、喧嘩売られてんのか?こんな店の中で?マジか。場所を考えて売ってほしいもんだなぁ。どっかのアホ女と同じかよ。あーっ、でも狂ってない分こっちがマシだな。あれは最高に狂ってた。やっぱ、遊ばれてポイ捨てされたダメージが強かったな」



亜紀。


あなたね。


もっと静かに来られないの?


それに、その話は関係ないと思う。



「私が早かった。何してたの?」



「水着姿のおねーさんに見惚れてた」



「へ〜ぇ。今の季節に水着ね」



「おつかい場所に可愛いお姉さんがいたんだよ。目の前で服を脱ぎ捨てるもんだから。遊んでただけだ」



「………………アホ」



「可愛い子だねって言われたから、お姉さんも可愛い女だなって言ってやったぞ」



「それで?」



「なんか、あっちがその気になった」



「それで遊んであげてたの?」



「なんだ?嫉妬か?」



「アホ。あなたが遅いから絡まれているのに」



「嫉妬してくれないのかよ」



「用事がない日に遊んで」



「遊んでねーぞ。目の前で脱ぎ捨てられたのは本当だけどな」



「………………」



「いや、マジで遊んでないって!」



「そんなことよりプリン。あと、お昼どうする?どっかで食べる?」



「あっ?あ〜っ、ラーメン食いたい。いいか?」



「いい」



「んじゃ、決定な。んで、遊んでないぞ」



もう分かったから。


うるさいな。



「ちょっと!急に何?誰?」



あぁ、そうだった。


この女と日向がいたか。



「あ”っ?なんだ?まだ、やるのか?」



亜紀の機嫌は一気に不機嫌になった。


邪魔したのがいけなかったか。



「亜紀。いいから。プリンを買わないと」



私は亜紀の腕を掴んでその場から離れた。


レジのところに言って予約した椎名ですと言うとお待ちしておりましたと元気がいい声で言われた。


でも、店員の目は私ではなく亜紀を見ている。


………………。


今更だが、女性のお客さんの殆どが亜紀を見ているような感じに思える。


………………。


いや、見ているな。


あのファンクラブの女も亜紀を見ている。


は〜ぁ。


少し待つと発泡の箱に入ったプリンが出てきた。


ちゃんと保冷剤も入っているため、数時間は大丈夫だろう。


会計を済ませて亜紀にプリンが入った箱を持たせる。



「うわっ!重いな」



「ガラス瓶だからね」



「しかも、2箱」



「数が多いからね」



お店を出て車に箱を乗せる。


そして、車に乗り込んだ。



「お前、なんであの男と一緒にいたんだよ」



「お昼ご飯を食べに来たらしいよ」



「へ〜ぇ。お昼ご飯ねぇ。女連れでか」



「ファンクラブの子。お昼を食べてから会長のところに行くらしい。あの女が言っていたから」



「どこにでも行けって。されるがままだな。逃げられねぇようにガッシリ掴まれて。男が情けねぇよ。あとが怖いんだろ」



「はい、出発。早くして。お母さんがプリンを待っているから。それと、お腹空いた。ラーメン食べたい」



「はいはい」



駐車場から出てインターの方向に進む。


どうやら、走りながら探すようだ。


ラーメンならありそうだし。


それに、サービスエリアにラーメンあるし。



「なぁ?」



「何?」



「お前、気づいてねぇだろ?」



「何が?」



「あの男、俺を見てびっくりした後にお前のことずっと見てたぞ。何か言いたそうな顔してた」



「………………それは気付いてなかった」



「まぁ、隣に女がいたから言わなかったんだろうな」



「そう」



何を言いたいのか知らないけど、きっとくだらないことだろう。



「おっ!発見!」



インターの近くってなんでラーメンのお店がある確率が高いのだろう。


ガソリンスタンドは分かるけど。


お店に入るとお昼の時間だからそれなりに混んでいた。


家族連れというより、近くの会社員や作業員が多い。


まぁ、そんな感じのラーメン屋だな。


綺麗なお店ではないし。


ラーメンを食べ終えるとすぐに車に乗り込んで高速に乗った。



「今度の日曜日空いてるか?空いてるな。空いてるとしか受け付けないぞ。空いてると言え」



「何?お父さんの真似?」



「………………俺のために空けておけ」



「それはいいけど」



「よし。お出かけするぞ」



「どこ行くの?」



「お楽しみだ」



お楽しみか。


変なところは嫌だけど。


まぁ、出かけてもいいか。

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