第50話

「何かしたの?」



「直接はやってないっちゃ。言っちゃろ。最後の手段にとってん」



「じゃぁ、何?」



「日向に告白してくる女が増えてん。それりゃ、かなり心が穏やかにはなれんわなぁ。どんな些細なことでもイライラしちょる。いやぁ、実に簡単やわぁ。女を動かす餌は簡単や。少し情報をバラすだけでええ。そしたら、あとは勝手に広まる。いやぁ、表はええなぁ」



「そう。餌って?」



「恋する女は自信を持たせれば何ちゃらや。あの坊ちゃんは色々弄り放題やわ。なーんもしてないんよ。だから、色々な情報を流せるもんや。嘘だろうがすぐ信じる。女の妄想は面白いなぁ。そんなんするわけないのに夢を見てるっちゃ」



あーっ、なるほどね。


勘違いをさせて女を動かしたのか。


凄く楽しそうに見てるよね。


ドロドロしてるの見てるだけで楽しそうにしてるし。



「あのさ、見てしまったの」



「なんを?」



「されるがままの状態。たくさん写真撮られてた。服も脱がされちゃって。抵抗してなかった」



「へ〜ぇ。だろうな。あの様子じゃそうじゃろ。あんなぁ、昨日はあの女と一緒やったんよ。あの坊ちゃん、何度もスタンガン食らったようだっちゃ。肌に直接で痛かったろうなぁ。それでも、動かんよ。あの女の背中に自分の手回してん。命令通りに動く。あとはなーんもしない」



本当に馬鹿だ。


いや、海はそれを見ていたのか?



「海、そんなに見てるのね」



「その場で見てたわけやないよぉ。あとで確認しただけっちゃ。カラオケルームで何やってんだか。監視カメラもあるっちゃに。死角狙っているが、やっぱ坊ちゃんの様子で分かる」



「その場でレイプしたわけじゃないんでしょ?」



「嬢ちゃん。めちゃくちゃはっきり言ったな!まぁ、そうやね。不思議だっちゃ。孕ませて貰えばええのに。そしたら勝ちやろ?」



「彼女には考えがあるんでしょ?」



「ファンクラブの掟か?くだらん。はよー自分のもんにしよーたらええのに。まぁ、それが一番早く片付くがなぁ。その壁ぶち壊したろうか」



もう、何でもいいよ。


早く片付くのなら何でもいい。



「で?私の迎えはなぜ?」



「待ち伏せされるかなぁって思ったん。正解やったわ」



「明日も来るの?」



「明日はバスで帰ってきーな。嬢ちゃんは後回しやろ。明日から日向も来る。アホな女が先やろなぁ」



考えてはいたのか。


どれだけ告る女がいるんだか。


アイドル並みではないか。


家に帰るとお父さんがいたがお母さんがいなかった。


今日も帰って来ないらしい。


本当に大変なことをしてしまったのか。


ケイは私が帰って来ると足に飛びかかって来た。


これは遊べというアピールなのか。


それとも、お腹が空いたというアピールなのか。


よしよしと頭を撫でると、足元に猫がもう一匹近づいてきた。


あれ?


私の家ってもう一匹いたっけ?


………………。


あれ?


この猫ってムーンじゃない?


あれ?


ムーンで亜紀の飼い猫じゃなかった?


あれ?



「あれ?えっ?」



「亜紀君なら凛の部屋にいるよ」



「いや、何勝手に人の部屋に入ってるの」



「止めたけど全く言うこと聞かない子だからね。猫2匹連れてきたと思えばケイも混ぜて凛の部屋で遊び始めて。急に押しかけてきたからびっくりした」



本当にびっくりだよ。


猫がもう一匹と言うことはレインもいるってことだよね?


ムーンとケイを抱き抱えて自分の部屋に向かうと、レインと遊んでいる亜紀がいた。


猫のおもちゃを引っ張り出して遊んでいたのだ。



「亜紀」



「おーっ、おかえり」



「本当に突然ね」



「猫のストレスを発散させるためだ。今、家に犬がいてな」



「あなたの家にはもともといたでしょ」



「いや、違う犬だ。隣の家の犬だ。旅行で預けられてな。室内犬でデカくて。このチビ達がすげー嫌がるんだ。部屋の中がめちゃくちゃになるくらい機嫌が悪くなってよ。もうお手上げだ。何がそんなに嫌なんだか。相性が悪いらしい」



それは可哀想に。


亜紀の家はいろんな動物がいるから慣れていると思ったが、そういうものではないらしい。


………………。


まさか、この流れは………………



「ねぇ?もしかして、ムーンとレインの面倒を見てとか言わないよね?」



「いや、違う」



なんだ、違うのか。



「俺がしらばくここに泊まってムーンとレインの面倒を見ることにした。ついでにケイのも見てやる」



いや、なんかおかしくない?


絶対におかしいよね?


亜紀はいらないでしょ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る