第43話
本格的なインドカレーのナンは思っていたより大きくて驚いた。
普通サイズなのだろうか?
もう少し小さくてもいいのでは?
「なぁ?あの男だけどよ」
「何?」
また、日向のこと?
「どっかで見たんだよなぁ。日向って名前もどっかで………………」
「彼の父親はテレビに出てるから」
「あっ!!あれだ!!思い出した!!!!俺の女を見てた野郎じゃん!!」
「うるさい」
店内で大声禁止だ。
何を思い出したの?
「そうだ。あの時の男か。あーなるほどな。さっきから、あの目が気になってたんだよな。そうか、そうだった。気にしてなかったからな。もう、その他でバリバリだったし」
「だから何?」
バリバリって何?
「花火大会の時の男だ。お前の母親の実家に行っただろ」
「………………」
あぁ、そういえば亜紀が来たっけ。
顔丸出しで。
みんな、亜紀の綺麗な顔を見て驚いてたな。
「そうだね。その時の男で間違いないよ」
「はーっ、あの時の男だったか。ん?あーっ、んぁ?」
何?
また、何か言うことあるの?
「なぁ?あの男って、1人だよな?」
「はぁ?何言ってるの?」
「いや、あの男の後ろにいたなって思っただけだ。こっち側っぽい奴が」
「………………」
きっとミンエイのことだろう。
少し見ただけでそう思うの?
だけど、亜紀のお陰で思い出した。
日向にはミンエイがいる。
お父さんから紹介されたお世話係だ。
彼はどんな立場なのだろうか?
「おーい。凛?飛んでるぞ」
「ごめん」
「何考えてたんだ?」
「その後ろにいた人について。お父さんが彼を紹介したって言ってた。あと、微妙って言ってたんだよね」
「微妙?」
「日向家に裏関係があるのかって聞いたことがあるの」
「へ〜ぇ。俺はそっちより紹介したっていう男が気になるけどな」
海ならそこまで調べていると思うけど。
いや、お父さんから聞かされているかもしれない。
「動かないんだな」
「えっ?」
「そこまでされてんのに、動かないんだなって。役目があるんだろ。その男の役目が」
役目か。
どんな役目があるのか。
世話役って言ってたからな。
ただの世話役ではないのかもしれない。
「まぁ、それはそれこれはこれ。あと、俺が考えるに日向家に裏はないな」
「なんでそう思うの?」
「だって、微妙だから」
………………。
それって答えになってない。
何か根拠があるから断言出来てるでしょ?
でも、それを私に教えるつもりはないらしい。
まぁ、いいよ。
そこまで気にしていないし。
日向からは裏らしいものは感じられない。
微妙ということは表よりなのだろう。
「まぁ、お前が巻き込まれなきゃいい」
「そうならないように海が動いてる」
「アホなことしてないといいな」
「それは、どうかな。自滅させるって言ってたし」
「それはいいな。楽でいい。勝手に自滅してくれたら片付けもしなくていいし。裏が直接やると片付けが面倒でな。表相手に動くのも億劫だ」
光さんと同じようなこと言ってるし。
「お父さんの命令を無視してるかも。手加減してないかも」
「手加減はしてるだろ。まぁ、自滅の意味が一般的な意味ではないかもな」
やっぱ、手加減してないよね。
「スキャンダル好きだよなぁ。マスコミって………………テレビ、毎日確認しておくか」
「朝、テレビつけて画面にそのことが流れていたら、飲んでる牛乳噴き出すと思う。その自信あるよ」
「馬鹿なこと言うなよ」
「いや、亜紀が最初に言い出したことだから。だって、自分が通ってる短大がテレビに映っていたらびっくりするでしょ」
「海がそんなことするわけないだろ」
だから、お前が言ったんだろ。
テレビって言っただろ。
「俺は動かないから。全部、海に任せてんだろ?まぁ、適任だろうな。アレは一応柚月の側近だった。有名だったぞ。アイツの仕事。アレは使える。アイツも表相手に馬鹿なことしねぇよ。お遊びみたいなもんだろ」
いや、お遊びで動かないで欲しいけど。
海にとったら今回の件はかなり楽勝なことなのかもしれない。
実際、日向のことを調べるのも楽しんでいた。
暇潰し程度か?
「本当になぜ拾ったのか」
「いや、今更だろ。つーか、もう遅いぞ。文句は自分の父親に言えよ」
言わないよ。
文句とかじゃないからね。
ただ、疑問だっただけだ。
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