第42話

「一緒に行動してるわけではない。そこの本屋で会ったの。彼、学校のクラスメート」



「クラスメート?へ〜ぇ。クラスメートねぇ」



「なんでそんなに怪しむの?本当にクラスメートだよ。馬鹿なこと考えてないよね?」



「いや、どっかのポチ野郎と一緒なのかと思っただけだ」



「やっぱり、馬鹿なこと考えてる。彼の父親がこの近くのホテルで仕事をしてるらしいの。暇なら本屋に来たって」



「父親の?パパっ子?」



「………………」



なんか、説明するの疲れるな。


パパっ子って、そんなに可愛らしい言い方しなくても。


ちょっと引く。



「椎名さん。この人は誰?」



「あぁ、ごめん。高校の友達。あまり深く考えないで」



「高校?椎名さんの友達ってみんな顔がいいの?」



「そういうわけではない」



たまたまってだけだ。


………………。


でも、知り合いをよく考えてみるとどれも顔がいいかもしれない。


………………。



「どーも。顔がいいから毎日声を掛けられて、女共を無視してるが凛には無視をされたくない男でーす」



「どうも………………日向です」



「俺、めちゃくちゃ引かれる?」



そうね。


凄く引かれてる。


自分で顔がいいって言ってるところからね。


まぁ、本当のことだから許せる範囲ではある。



「亜紀。少し考えて喋って」



「俺はいつも考えて喋ってる。で?お前、どっか行くのか?」



「この先にあるチーズケーキを買いに行くの。食べたくなった」



「なら、暇だな」



「暇だとは言ってない」



「いや、暇だな。俺からしたら暇だ。付き合え」



「どこに?」



「どっか」



「………………」



亜紀は私を手を掴んだ。


断る選択肢など存在しないのだ。



「えっ?ちょっと、君!それは、ちょっと無理矢理なんじゃ?」



日向は亜紀が私を連れて行こうとしたことに驚いた様子だった。



「んぁ?無理矢理?別に凛は嫌がってねぇよ。嫌ならちゃんと言うし態度にも出る。あーっ、腹減った。なんか食うか?何食いたい?奢ってやるぞ」



「ケーキ」



「却下だ。ケーキバイキングは駄目だ。俺は白井じゃねぇぞ」



「でしょうね。なら、この近くにカレー屋があったよね。そこでいいんじゃない?」



「インドカレーだったか?そうだな。近くだし。腹に入れば全部同じだしな」



「最後のは理解したくない」



亜紀との会話を優先してるためか、日向の存在を完全に薄れてしまっていた。



「椎名さん!」



だからなのか、日向が私を呼ぶ声でビクッと身体が飛び跳ねてしまった。



「お前、何驚いてんだよ」



「いや………………びっくりしたから」



引き戻された感覚が凄くする。



「椎名さん。また、明日会おうね。明日はケーキ作りの最終調整だから。道具とか忘れないで」



「あぁ、うん。また、明日」



引き止めてそれだけって感じなのだが。


まぁいい。


軽く言葉を会話しただけにしてその場を去った。



「なぁ?あの男はなんだ?」



「何が?」



「普通の男だよな?」



「そうだね。表側の男だね」



「お前、何知ってんだ?」



隠すことでもないし。


話してもいいか。


そう思って出るだけ要点を絞って話した。


亜紀は話し終えた最後に深い溜息を漏らした。



「お前って奴は、なんでそうも面倒事になるんだ?なんで、資料室にいるんだよ。タイミング悪すぎるだろ。つーか、あの男もアホだな」



「私は、悪くないけど。あっちが入ってきたから。日向がアホなのは否定しない」



「そこまで大事になっているのなら、1人じゃ何も出来ないだろうな。ファンの力は凄いからなぁ。しかも、質がかなり悪い。ファンクラブの会長が一番権力持ってんだな。どっかの悪い奴らと仲良しなんだろ」



「会長に報告してるらしいし。今日のパンツは黒でした、とか」



「脱がして確認するんだろ?」



「そうなんじゃない。彼、されるがままだから」



「諦めるのはいいが、そのうち殺されるかもな」



海は自滅の道に進ませるらしいけど。


どんな自滅に追い込むのかは知らないけどね。

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