第39話
女が泣いた日から2日後。
私が知らないところで女が巻き込まれているようだ。
他の学科の人達にも及んでいるという。
これも、大塚さんから聞いた話だが。
カツサンドを食べながら、そんな話をしていると廊下を歩いている日向とその取り巻きが見えた。
「愚連隊だね。何がそんなに楽しいのか。会話が成立してないのに」
「一緒にいるだけでいいんじゃない?会話よりその周りにいるだけで幸せってことでしょ。周りの空気を吸いたいとか」
「椎名さん。それ自分で言って気持ち悪いとは思わない?」
「思うよ。空気なんてみんな同じでしょ。隔離してるわけじゃないから………………隔離か」
「椎名さん。今、隔離してみたらどうなるのかなって思ってるでしょ?恐ろしいこと考えてる」
「実験してみるべきじゃない?12時間くらいあの人達を閉じ込めて、その後どうなるのか。もみくちゃにされるかな?」
「………………そうだろうね。女性恐怖症になるかもねぇ」
「案外、相手にするかもしれない。誰かが言ってたよ。男は狼だって」
「いや、数が尋常じゃないから。1人とか2人のレベルじゃないから」
「10人だろうが20人だろうが、男なら幸せなんじゃない?」
「いやぁ、それは違うんじゃないかなぁ」
海は何やら考えているらしいが、今のところ特に自滅してはいない。
まぁ、すぐに潰されるわけではないのか。
だが、被害が大きくなっている。
告白したりそれなりの好意を示す女には容赦しないだろう。
「でも、大人数は無理でも少人数ならもしかして閉じ込められたりするかもね。椎名さんだったどうする?閉じ込められたら」
「ドアに飛び蹴り」
「………………怖い」
「なら、大声で叫ぶ」
「聞こえなかったら意味ないよね」
「窓から飛び降り」
「2階だったら怪我するよ。窓あるか分からない」
「困った」
「………………」
私ならいろいろ状況に合わせられるけど、素人ならどうするだろうか。
「ねぇ?大塚さんは他の学科の子とも仲良し?」
「知り合い程度かな。どうして?」
「他の学科にもそれなりに日向信仰者がいるのかなって」
「宗教じゃないから。いるよ。隠れて写真撮ったり。登校の時に日向君が来るのを待っているとか。ただ、見るだけ」
「そっか。ねぇ?どこまでがストーカーになるの?写真は?待ち伏せは?」
「あーっ、それは難しい。アウトでもあるしセーフでもあるかな?」
「そう」
放課後。
事件が発生した。
お昼にあんな話をしたらいけなかったのか?
『日向君。ごめんねぇ』
『最近の日向君は呼び出し多いでしょ?心配しちゃったの』
あぁ、なぜこの資料室に鍵があったのだろう。
そして、私が使っているのに彼女達はなぜ確認しなかったのだろう。
ここに閉じ込める前に誰かがいるかもしれないということを考えるべきだ。
『日向君と一緒にいたかったの。大丈夫だよ!外には見張りもいるし。ちゃんと出られるからね』
『そうそう!ほら、日向君のこと拘束してないし』
日向の声はさっきから一度も聞こえない。
聞こえるのは女2人の声だ。
閉じ込められた本人様はどうやらだんまりのようだ。
外には見張り役ねぇ。
まぁ、用件が済んだら出すつもりなのだろう。
さて、どうやってでようか。
ここの資料室には窓がない。
ということは、窓から出るという手段は使えない。
まぁ、表相手に本気でやろうとは思ってないし。
そうなると、普通に目の前に飛び出してこの場所から出せって言うしかないのだが………………
少々、日向の対処が気になる。
だから、ちょっと様子を見ようと今いる場所から移動した。
あちら側から死角になって見つからない場所に。
こういうことは今でも出来るらしい。
ちょっと複雑な気分でもある。
『日向君がたくさん告白されたら、断るのも大変かなって思ったの。だから、そうなる前に動いちゃった。嬉しいでしょ?』
『勉強の邪魔になるもんね。告白なんて迷惑だもんね』
あーっ、理解できない。
なぜ、それをあなた達が決めるのだろうか。
『迷惑になる前になんとかしてあげたの。だから、ご褒美が欲しいなって。日向君のご褒美が欲しいなって』
『毎日、観察して他の学科の子にも忠告したの。頑張ったんだよ!』
ファンクラブだったか。
これは、なんともおかしなファンクラブだ。
殴り倒したいほどの。
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