第38話

海から色々聞かされてから3日後のこと。


朝、いつものように教室に入っていつものように挨拶でもしようかと思ったがやめた。


そんな雰囲気ではない。



「椎名さん。おはよう」



大塚さんが後ろからやって来た。



「おはよう。これはどういう状況?」



何やら、1人の女が泣いている。


周りの人達も戸惑っているようだ。



「えっと、私も詳しくは知らない。でも、どうやら日向君関係らしいの」



「へ〜ぇ。朝から?」



「そうだね。朝から」



「………………元気だね」



「いや、そういうことではないと思うけど。元気の使い方間違ってると思う」



朝から泣く体力あるんだから元気でしょ。


私は眠くてしょうがないのに。


和菓子コンテストのことを考えていたら寝る時間が遅くなってしまった。


起きるのがとても辛かったなぁ。


さて、日向関係ということはファンクラブでも動いたのか?


虐めでもされたか?


その後、泣いていた女は授業に参加しなかった。


お昼の時間になって、どっからか情報を聞き出したのか大塚さんが先程の件を話し出した。


どうやら、日向に数日前に告白していたらしい。


そして、告白したその日から身の回りで不思議なことが起こり始めたという。


自分の持ち物が消えたり迷惑メールがきたり。



「怖いねぇ。日向君はみんなのものアピールだよ。女って本当に怖い」



「大塚さん。残念だけど、私達も女だよね。誰だってなり得るかもしれないよ」



「怖いこと言わないでよ。マジで」



「で?その告白した子はなぜ泣いていたの?」



「玉砕と嫌がらせが酷いから我慢できなかったらしい」



「先生に言ったの?」



「言ってないと思うよ。言ったら報復が怖そうだし、こういう問題って難しいから。それに、恥ずかしいと思うけど」



教室内を騒つかせたら先生だって気づくだろうに。


学園みたいに無視とかしないだろう。


先生もグルというわけでもないだろう。


海も先生の中にはいないと言っていた。


生徒の中だけって言っていたし。


あの泣いた子も日向のことを諦めたら嫌がらせも止まると思う。


近づかないように過ごせば平和に暮らせるだろう。



「大塚さんのチームは順調なの?」



「うん。そうだね。特に大きな問題はないよ」



「そう。それは良かったね」



「………………椎名さんのところは問題あるみたいだね」



「………………」



海から日向のファンクラブに入っている人達の写真を何枚か見せてもらっていた。


その中にいたのである。


私のチームに2人。


つまり、あの取り巻きはファンクラブ会員だったのだ。


これには流石に声をあげて驚いてしまった。


私が声をあげたことで海も光さんも驚いていた。


そして、その理由を話すと2人共笑っていたのだ。


笑い事ではない。


あの2人は私を敵視している。


だから、私は除け者にされている。


日向との会話を出来るだけさせたくないようで、2人はずっと日向に話しかけているのだ。


まぁ、手は動いているからそこは褒めてあげよう。


でも、協力して完成させなければならない。


日向から渡された仕事を奪わないで欲しい。



「やっぱ、お祓い必要なのかもね」



「何言ってるの?なんか呪いでも受けたの?」



大塚さんは日向のファンクラブがあるの知ってるのかな?



「平和な生活を望みたい」



「椎名さん。疲れてる?大丈夫」



「普通にしているつもりなのに。あっちから話しかけられたら、無視するのも悪いと思うじゃない」



きっと、無視しても敵視されるだろうし。


無視して敵視されないのなら無視をしたいところだ。



「あーっ、そういうことか。嫉妬しちゃってるのか。椎名さんのチームいるあの2人って、凄く積極的だけどちょっと変わってるところあるよね。なんか、引き際を探ってるっていうか」



ファンクラブ会員ですから。


普通の好き好き言ってる子ではないからね。


そこら辺は分かってるつもりなのだろう。



「あれは3人で作ったケーキだね。私のアイデアは何も使われてない」



日向も分かっているのか、アイデアなどは聞いてこない。


今回のチームは諦めよう。


先生も、相性を確かめますって言ってたし。


それで、また日向になったらちゃんと言うことにしよう。


日向とはもう組まないと。


あと、ファンクラブ会員の奴らとも。

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