第36話
2回目の話し合いの日。
デザインを数枚考えて書いてくることになっていたのが。
取り巻き2人は1枚で終わっていた。
1枚で全力投球をしたらしい。
でも、日向はその2枚とも気に入らない。
全てが気に入らないとのこと。
私も何枚か見せたが、日向はどれもイマイチな顔をした。
見せた私も何かパッとしないことを分かってはいたが。
無言はやめて欲しい。
「ねぇ?日向君の見せてよ。まだ、見てないよね」
取り巻きの1人が言った。
日向はみんなに見える場所に置く。
私はそれを覗き込むように見た。
………………。
絵が凄く上手だ。
それに分かりやすい。
詳細もしっかり書いているし。
これは、流石だと思う。
私は日向の実力というものを見たことがないが………………
これは………………
「うわぁ、すごーい上手!!」
「分かりやすいね!!もう、日向君のでいいよね!」
この馬鹿2人は何をそんなに嬉しそうにしているの?
これを見て焦ったりしないの?
これを見て、自分の低さに驚いたりしないの?
「普通に苺を乗っけてもしょうがないでしょ。生クリームで飾ってもインパクトないし。ピューレでコーティングしたほうが面白いかもって。中身はこっちのを見て。切ってみて中のバランスもよくないと見た目が残念になるから調整は必要だと思う」
「それなら、中はスポンジだけじゃなくてムースとかの層にしてもいいかも。割合とか何回か調整が必要ね。とろみが強すぎるとねっとりした感じがしつこくなるから、これも何回か試して………………」
「そうだね。スポンジの生地も調整が必要になると思う。苺をメインに考えるから、他は飾り程度で考えてもいいかなって」
「私は、それで賛成」
「なら、大体はこれでいいね?あとは作ってみて調整ということでいい?本番は時間が決まってるから、段取りも決めないといけないし。誰がどれを作るのか決めないと」
「そうね。材料の買い出しは誰にするの?」
「俺が買うよ。重いだろうし。失敗すると思うから多めに買うから」
「助かる。なら、次は試作品作りでいいのね?」
「いいよ」
お父さんの言ったこと分かる。
確かに、彼は料理が好きだ。
急に人が変わったように喋り出すもの。
目がちゃんと輝いている。
「ちょっと、なんか椎名さんばっかりはよくないと思う。私たちの意見は?」
「そうだよね。無視してるよね」
………………。
やってしまった。
日向と2人だけの会話になってしまったか。
「ごめんなさい。そんなつもりはなかったの」
「ふ〜ん」
取り巻きの1人がつまらそうな顔をした。
「ねぇ?日向君だけじゃ買い出し大変でしょ?私達も手伝うよ!あっ、椎名さんはバスがあるからいいよ。遅くなっちゃうもの」
「そうだね。たくさんあると思うし。日向君も全部は大変だと思う。協力すればすぐ終わるよね」
いや、お前ら2人が一緒に行くとすぐには終わらないだろ。
まぁ、その辺は日向に任せよう。
ちょうどその時にチャイムが鳴って授業が終わった。
お昼の時間になると大塚さんがお弁当を持って近寄ってきた。
「庭に行く?」
「うん」
私もお弁当を持って中庭に向かう。
中庭に着くと近くのベンチに座ってお弁当を広げた。
今日のおかずは唐揚げだ。
「どう?順調?」
「そう思える?」
「思えないな。だって、あのチームでしょ?かなりやり難いよね。デザイン画は決まったの?」
「まぁ、なんとか」
「へ〜ぇ。良かったね。でも、椎名さんはどうしてそんなに疲れてるわけ?一先ず、安心できたでしょ?」
「人間関係は安心できてないからね。ねぇ?彼って、やっぱり才能はあるね」
「はぁ?」
「デザイン画を見てそう思った。負けていられないって」
「………………英才教育されてたからじゃないかな?そんな感じしない?」
英才教育か。
私は、そんな教育されてはいないからな。
作りたい時に作るって感じだったし。
「そんなに深く考えてもしょうがないよ。教育されてた人と比べてもねぇ。差はどうしても大きいよ。でも、この学校の凄いところはそんな人達のことも追い越せるってことだよ。先生がちゃんと見てくれるからね。凄く厳しいけど。贔屓してるのって思っちゃうかもしれないけど、実際できてないしね。だから、怒られるの。遠藤先生の授業はソレだから」
やっぱ、そんなに簡単ではないか。
本を見ても実際作ってみないと分からないところもあるし。
家でも気になったものは作ってみないと。
太りそうだな。
お母さんの仕事場に持って行ってもらおう。
消費先を見つけておかないとね。
そんなことを思いながらパクッと唐揚げを食べた。
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