第34話

短大の入り口前まで歩くと「嬢ちゃーん」と呼ぶ声が聞こえた。


海は手をブンブン振っている。


友達に久しぶりに会った人みたいだなぁ。



「何?私の迎え?」



「その通りだっちゃ。東賀さんに頼まれてなぁ。夕ご飯を別の場所で食べるから連れて来てって頼まれたっちゃ」



「へ〜ぇ」



海は後部座席のドアを開けてくれた。


別に開けなくてもいいのに。



「嬢ちゃん」



「何?」



「なんかぁ、したん?」



「はぁ?」



何を言っているのか分からなくて、先に車に乗り込む。


海は、運転席に乗り込んですぐに車を走らせた。



「なぁ?嬢ちゃん」



「何?」



「さっき、嬢ちゃんのこと見てた奴がいたんよ。なーんか、怖い顔でなぁ。ありゃ、なーんか考えてんね」



「………………」



「どっかで恨まれたん?酷い顔してたでなぁ」



「私、短大でも恨まれるのね」



「あー、なーで。分かることあるんか?」



「面白くないって思われているかもね。男関係って感じかもね」



「んぁ?男だぁ?」



そんなに声を低くしなくても。


どこかで見ていたのだろう。


少しでもおかしな状況になり得るなら、排除しておこうと考えているのかもしれない。



「やられる前にやったほうがいいのか。でも、他人事で動くのも嫌だし」



「嬢ちゃん。なーに1人で分かってん?俺にも教えてくれんの?」



「この前、乗せたでしょ?男を。スタンガンを食らった奴」



「ほーう。あの男か。なん?嬢ちゃんの立場が羨ましがってる女がいるん?それは、御愁傷様や。馬鹿な女だわな」



「ねぇ?表だからね。裏じゃないから。学園のときと違うの。分かってる?」



「何も対処しなーでどうするん?見てるだけだっちゃ?こっちが危ないんよ。まぁ、いざとなったら俺が動くっちゃ。そういう指示だしなぁ」



やっぱ、動くんじゃん。



「中心人物が動いてくれたらいいのに。さっき、サークル内でキツめに言ってみたの」



「動かんだろうなぁ。アレはもっと酷いことにならんと駄目だっちゃ。いや、酷いことになっても動かんか?困った男やなぁ。やる気ゼロやなぁ。周りにいる奴らのことなんかなーんとも思ってないんだっちゃ。巻き込まれようが、あの男はどうでもいいんよ」



「だから、イライラするの。いっその事、病院行きになってもらおうかな?2年くらい」



「嬢ちゃん。めちゃくちゃブラックだっちゃ。わるー顔しとる」



私だけが狙われているわけではないだろう。


きっと、他にも狙っているはずだ。


さて、何人いるのか。


1人だけならいいけど。


スタンガンを持ち込んでくる女だ。


ナイフなども所持しているかもしれない。


かなり依存している可能性が高い。


近いうちに、周りが騒ぎ出すかもしれないな。


最初は嫌がらせ行為からか………………



「嬢ちゃん。調べてやるっちゃ。中学と高校だっけ?スタンガン事件から小さい事件まで全部。情報収集は大切や」



「お願い」



「隅々まで調べてやるっちゃ」



「なんか、ワクワクしてない?」



「してないっちゃ。まぁ、気に入らん男を隅々まで調べるのは面白いわなぁ」



いや、楽しでるよね?


それって、ワクワクしてるってことだと思うけど。



「恥ずかしいことまで調べなくていいから。私も知りたくない」



「それは、俺だけにするっちゃ」



「いや、調べるなって言ってるの。分かる?日本語分かる?」



「なーでなーで」



………………。


通じてない。


いや、無視されてるよね。



「なぁ?ケーキ作ったん?作ったケーキはどうするん?」



「まだ、作ってないけど作ったケーキは持ち帰りするか食べるか」



「いらんかったら俺にちょーだいな!食べたいんよぉ。感想も言っちゃるけん」



「私も食べたいからカットね。お父さんとお母さんにも食べて欲しいから」



「ありがとなぁ」



高速から降りて着くた場所はホテルだった。


ホテルの入り口前に降ろされて、海は「またなぁ」と言って去っていった。


これは、ロビーに入るべきだよね?


このホテル、凄く高級そうだけど。


ここのレストランで食べるのかな?


ちょっと辺りを見ながらロビーへと向かった。

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