他人事

第33話

ついに来てしまった。


チーム決めの日だ。


これが、成績にも響くのかと思うと恐ろしく思える。


非常に苦手なものだが、協調性をしっかり考えて行動したいものなのだが………………



「日向君。ここはどんなのにする?」



「やっぱ、フルーツたくさん使う?」



「………………うるさいな。自分で考えてから話してよ」



なぜ、この組分けになったのだろうか。


大塚さんとは別になってしまったし。


日向とその取り巻き2名と一緒だなんて。


これは悪夢かもしれない。


日頃の行いが悪かったのか?


そんなに私の行いは悪いのか?


柚月に会ったり、嫌な話を聞かされたり。


かなり疲れるな。



「椎名さんは、どんなのがいい?ケーキの種類は豊富だから。苺かチョコはチーズか。定番品から決める?あまり凝ってるのは無理でしょ?」



「私は、苺がいいなぁ。定番なら苺だよね!日向君もそう思うでしょ?」



「チョコだって定番だと思うけど。意外と簡単なのはチーズケーキだよね。ねっ?日向君」



「俺、椎名さんに聞いたよね?君たちには聞いてないよ」



このチームはダメかもしれない。


大塚さんのところに行きたいな。


取り巻きさんは私のことを無視しているけど、日向は私に話しかけてくるし。


こういうやり取りはとても面倒だ。


ここで叱りつけると後が面倒になるし。


どうしたものか。


このままでは何を作るのかも決められないままになる。


それはとてもよろしくない。



「ねぇ?班長を決めない?誰かがまとめ役になったほうがいいと思うの。どう?」



まとめ役が必要だろう。


バラバラなままだとどうすることも出来ない。



「そうだね。椎名さんに賛成だよ。君達も賛成だよね?」



「いいよ」



「私も」



ここまでは順調だ。


次は、誰が班長になるかだ。



「私は彼にお願いしたいと思うの。あなた達はどう思う?」



「いいよ!やっぱ、日向君だよね!」



「私も!!異議なし!」



この2人を動かすことが出来るのは日向だ。


ここは日向に動いてもらいたい。



「俺?………………面倒だな」



正直な気持ちですこと。


確かに面倒だろうな。



「この場合は多数決にしましょう。3対1によりあなたがこのチームの班長になりました。よろしくお願い致します」



日向は、面白くなさそうに私を睨む。


そんな顔されても決まったことだ。


私が班長になると絶対に従わないでしょ?



「………………何を作るのか決めるから。ケーキがテーマだから、どんなケーキにするか考える。自分が作りたいものを紙に書き出して。その中で重なっているものがあれば、それにしようよ」



まぁ、それならいいか。


チラッと2人を見るとちゃんと日向の指示に従っているようだ。


やっぱり、日向にして正解だな。


私も、いくつか紙に書き出す。


そして、4人それぞれの紙を見比べる。



「アンケートの結果。苺のケーキに決定。いいよね?これでいいなら、デザインを決めることになるけど。それは、次回の宿題でいい?次回までにいくつか考えておいて」



流石に、全部は決められない。


それは、他のチームも一緒だろう。


デザイン画は次回の授業で提出することになった。


放課後、いつものようにサークルの教室で和菓子コンテストの準備をしている時に、日向が声をかけてきた。


どうやら、先程のことで何か言いたいらしい。



「何?さっきのこと?」



「なんで、勝手に決めるわけ?」



「あのまま何も決まらないよりはマシだと思うけど。最悪なケーキになったら評価が下がる。遠藤先生が作ったケーキを見るんでしょ?おバカなケーキなんて嫌だもの」



「俺に面倒事押し付けないでよ」



「あの2人を動かすためには、あなたじゃないと駄目だから。私の言う事聞いてくれないでしょ?そのくらい分かってよ。何?そんなに不満なの?私が、あなたと同じチームじゃなかったらこんなことにはならなかったのにね。は〜ぁ、本当に疲れる。どうして、そんなに無能になりたいの?自分で片付けられるものを、他人に押し付けるのがそんなに楽しい?いい加減にしないと本当にとんでもないことになる。あまりナメるなよ。スタンガンで終わるなんて思うな」



バンッと資料を閉じてバッグの中に入れると急いで教室から出た。


後ろから追ってくる気配はない。


イライラする。


なんとも言えない怒りだ。

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