第31話
「おい。目で話すな。口で言えや」
「あっ、ごめん。なんか、ちょっと何を言えばいいか」
「何、固まってんだよ。まずは、なんでここにいるのか聞けよ」
「そうだね。なんでいるの?」
「迎えだ。もちろん、お前のお迎えだ」
迎え?
誰から頼まれたの?
「お父さんから?」
「そうだ。どっかの誰かが拉致をしたらしくてな。それが、何やら気になったらしくてな。トレードマークだった金髪を真っ黒にした奴に頼んでもいいが、変な刺激をされても困るから、仕事で忙しいのに無理矢理仕事を奪われて迎えに行ってこいと言われた」
「………………」
うん、分かったような分からないような。
でも、何が原因なのか分かった。
昨日の件がそれなりに響いているらしい。
「それは大変ね」
「お前が関係してるぞ。他人事のように言ってるけど。お前が関係者だぞ。昨日の夜に電話がきやがった。裏の仕事をしてる時にな。そしたら、お前が柚月と仲良くおねんねしたって聞かされたぞ。なんだそれ?俺だって、そんなことしてねぇのに。先に進みやがって。その先まで許されたら発狂しちまいそうだ」
「その先まではない。流石にないから」
「車で来たから行くぞ」
そう言って駐車場に向かう。
車は白のセダンだった。
「亜紀の車?」
「違う。乗れ」
助手席のドアを開けて車に乗り込む。
亜紀の運転は初めてだ。
安全運転でお願いしたい。
運転席に乗り込んだ亜紀は車をゆっくり走らせた。
乗ってみて分かったこと。
凄く運転が上手だ。
もしかしたら、海より上手かもしれない。
「なぁ?」
「何?」
「柚月に嫌悪感は感じないよな?」
「………………まぁ、うん、なんとも言えない感じ。裏が関わったからだと思うけど。前とは違うのは確かだよ」
「2人っきりになってもか?触れられてもか?」
「そうだね」
「そこまで変わるんだな」
「変わっちゃうんだね」
柚月に会うたびにそう何度も思うことだろう。
自分の中で柚月の見方が変わったことを実感させられる。
「堂々だな。あの男は。アイツが何をしているのか知ってるか?」
「凄く忙しいのは分かってる。興味ないから」
「いいから聞けって。いや、聞いたほうがいい」
何か知ってるの?
「有り得ない話ではないな。可能性はある。何でもかんでも利用する奴らだからな。どんなに使えないもんでも。そこに利用価値があるなら使う。どっかの処分された女もそうだっただろ。女自体には価値はなかったが、女の後ろが使えたから契約を結んだ。それに巻き込まれた奴は可哀想だなぁ。毎日、コンビニ弁当生活だな」
それって、海のことでしょ?
お父さん、亜紀に全部話したのか。
「話を戻すが、喜一と柚月は争うつもりだ。こっちは、見ているだけだが………………今のところは観察だな。あっちの動き次第で変わるかもしれないが」
「ちょっと待って。まさか、その2人の争いに巻き込まれる可能性があるとでも言いたいの?」
「そうだ。言っただろ。何でもかんでも利用する奴らだって。奴らっていうのは喜一のことだぞ。引退したとか言っても裏で動いているのは喜一だ。柚月は今でも操り人形だな。喜一が死ぬまで。アイツの命令を実行するだろ。だが、柚月は大人しく従ってるのが嫌なんだろ。聞かされた話だと、ずっと前から考えてたそうだ。計画が狂ったようだが。凛が学園に来たからなぁ。色々、考え直しただろうなぁ」
「聞けば良かったかな?」
「柚月にか?アホ。教えてくれるわけねぇだろ。だから、俺が教えてる。不満か?俺から教えられて」
「不満とか思ってないし。というか、さっきからイライラしてない?」
「してる」
即答ですか。
何やら面白くないようで。
「途中までは良かったのによ。やっぱ、徹底的に潰さねぇと駄目か。性格最悪なのにな。実験で作られた性格って一番厄介だ。どれもこれも嘘っぱちだ。どれが本物でそれを信じたらいいのか分からねぇだろ?お前、そのこと分かってるよな?」
確かに、それは嫌というほど知っている。
何度も壊されたから仕上がったものだけど。
だから、裏で生きていけるのだ。
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