第26話

「こっちは退屈なのに。毎日、毎日、学園の頃と変わらないかな。でも、下心は少し変わったかな。真っ白な下心だね。流石に真っ黒はないかな」



でしょうね。


あの学園はかなり異質だった。


下心も今の状況と違った意味だし。


こっちの方が分かりやすくて、凄く動きやすい。



「友達出来て良かったね。たくさん」



「アレが全員友達なわけないでしょう」



「だよね。そうだよって言われたら全力で切れって言っちゃうところだったよ。あと、あの中で結構身なりがいい男だけど、アレはあまりオススメしないな。アレなら、風間君のほうがいいと思うよ」



「なぜ、そこで風間?日向は友達じゃないけど。あの中だと女だけだから」



「彼、日向って言うの?へ〜ぇ」



何?


気になるの?



「同性愛にでも目覚めた?」



「………………馬鹿なこと言ってると、この場で押し倒すよ」



あっ、凄く嫌な顔してる。


冗談だったのに。



「彼は、お父さんとライバル関係にある人の息子さんなの。私も、そこまで詳しくないけど。色々悩ましいことがあるらしい」



「たとえば、モテすぎてストーカー被害にあってるとか?」



「………………超能力にでも目覚めたの?」



「本当に馬鹿なこと言わないでよ。このまま俺の家に連行するよ。俺はそれでいいけどね。もちろん、お泊まりコースだね。あぁ、もちろん一緒に寝ようね。今はそんなにうるさく言われないだろうし。結構、簡単に承諾されるかもね」



「………………」



家に拉致られるのは嫌だな。


これ以上は冗談言わないのがいい。



「なんだか、巻き込まれているのにどうでもいいとでも思っているらしくて。スタンガンを食らったり。それなりに体験してるかもね」



「スタンガン、ね。スタンガンくらいなら大丈夫でしょ。まだ」



「表と裏の区別はして。表側でスタンガンは異常でしょ」



「う〜ん。彼もそれなりに惹きつけるタイプらしいね。椎名さんもだけど。少し似てるけど、椎名さんの場合は裏側で発揮されるからね。まだ、彼のほうが幸せだよ。堕ちてもそこまで酷くならないでしょ」



「あなたの考え方は相変わらずね」



「ありがとう。で?海、元気?」



「………………」



ここで、その話するの?


急にその話をされても。



「元気だと思う」



「なぜ、思う?」



「………………管理は私じゃないから」



「あぁ、そうだね。ヤル前に東賀さんが持っていったからなぁ。役に立つといいけどね」



「………………」



本題は海のことか?


いや、私に海の話をされてもよく知らないし。


それは、柚月も知ってるはずだ。


………………。


そういえば、雪が何か言っていたっけ?


様子がおかしいとか。


………………。


いつも通りだと思うけど。


………………。


………………。


………………。


は〜ぁ。



「この前、雪に会った」



「雪に?どこで?」



「真理亜の迎えに来た」



「あぁ、ストーカーしてるんだっけ?白井さんのこと本気で好きみたいだね。もしかしたら、2人で住む部屋とか決めてたりして。そこに閉じ込めることにしてたりして」



「どっかの誰かと違うから。閉じ込めることはしない、はず」



「どっかの誰かって?誰のことかな?あぁ、風間君のことかな?」



「柚月」



「白井さんも大変だね。彼女もそれなりに魅力的だから。椎名さんと一緒にいたから開花したのかもね」



「柚月」



「彼女、最初はあんな子じゃなかったのに。成長するのはいいけど、悪い方向に成長しなければいいね」



「柚月!!」



「………………」



「柚月。話を聞いて」



「何も言わないよ」



「言わなくていい。知りたくないから。ただ、雪があなたのこと気にしてた。それだけ」



「ふ〜ん………………どっか、行きたいところある?」



行きたい場所?


家に帰りたい。



「家に帰りたい」



「そっか。ないか。なら、俺の行きたいところに行こうかな」



「家に帰りたいって言ったけど」



「いつもの店に寄って」



「無視するな」



全く話を聞かない。


いつもの店ってどこ?


どんな店?


私、帰れるかなぁ。

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