第23話

出来立てグラタンはかなり熱々でグツグツしている。


これ、かなり強火?


そのうち冷めるか。



「平日だから空いてて良かった。土日とか凄く混むらしいよ。みんなシフォンケーキ狙いだって。ネットでそう書いてあった」



「生クリームたっぷりのパンケーキは2位だって」



「パンケーキかぁ。高校の時はよく食べてたよ」



甘い物か。


真理亜ならたくさん食べそうだ。


帰りにドーナツ食べてるし。


パンケーキくらいへっちゃらだろう。



「ねぇ?」



「何?」



「あれ……………」



あれ?


大塚さんはフォークで私の斜め後ろを指していた。


何やらその方向に何かがあるらしい。



「いつの間に入って来たのか。女子達がいなかったから気づかなかったのかな?やっぱ、うるさい奴らがいないと静かでいいね。こんな素敵なお店で騒がれたら気分が悪くなりそうだもん。アホすぎて同じ短大に通ってるとか思いたくない。でも、珍しいよね。男達だけって。上手く逃げたのか?」



大塚さんの話から考えると日向がいるのだろう。


女達から逃げれたのか、それとも周りにいる男達が守ったのか………………



「スイーツ男子会ってやつ?」



「大塚さん。あまり、そっちを見ないほうがいい」



「そうだね」



まだ、熱々なグラタンをゆっくり食べながらメニューを見る。



「ドーナツパフェって、なかなか斬新だね。ドーナツはドーナツで食べたいけど」



「なんでもありだからねぇ………………和菓子も斬新で攻めてみるのもありだと思うけどね。どう?」



「斬新?」



………………。


いや、そこはやめておこう。


斬新は認められない確率が高いだろうし。


和菓子で斬新?


全く、考え付かない。



「やめとく。余計に分からなくなるかも」



「やっぱり?ウケ狙いだったけど」



「ウケは狙ってないから。最初のコンテストだから形はしっかりしたい」



「そっか。頭は柔やわにね。あまり考えすぎると知恵熱出るよ」



そこまで柔じゃないから。


あっ、少し冷めてきたかな?


食べやすくなってきたかも。



「やっぱ、大塚さんと椎名さんじゃん!なんか、見たことある奴らがいるなぁって思ってたんだけど」



ヒョコっと出て来たのはクラスの男だ。



「何?いちゃダメなの?ダメだった?」



「いや、ダメとか言ってないだろ。ただ、いるなぁって思っただけだし。日向が先に見つけたんだよ。そこで!だ。お前ら、凄くついてる!」



「うるさいな。もっと小さい声で喋ってよ」



大塚さんの眉間にシワが寄っているのが分かる。


うるさいのが嫌らしい。



「ここ、日向父のお弟子さんが出した店らしくて。その繋がりで試作品を食べることになったんだと。お前らもどうだ?そのお礼にここの人気メニューのシフォンケーキ食えるぞ」



「そういうことか。試作品か………………」



「試作品が食えるのって俺たちにとったら嬉しいことだろ。日向が、お前らを見つけて一緒にどうだって。勉強にもなるし。無料だし。あっ!他の料理は無料じゃないからな」



「お前は無料に吊られただけでしょ。でも、試作品か」



大塚さんはチラッと私を見る。


きっと、試作品とやらを食べてみたいのだろう。


でも、なぁ………………


日向関係でしょ?



「大塚さんが食べたいなら。でも、席は移動しなくてもいいよね?」



「いいんじゃない?あっちに行かなくても。面倒だし。つーことで、伝えてきてよ」



「はいはい」



男は自分の席に戻ったがすぐに戻ってきた。


どうやら、試作品だから店の隅で食べて欲しいとのこと。


私たちがいる場所はお店の中央。


大塚さんはそれの意味が分かったのか今食べているのが終わったら、そっちに行くと言った。


男はそれを伝えるためにまた戻って、またこっちに戻って来て伝言係をしていた。


今更かもしれないけど、私たちがあっちで話せば良かったのか?


まぁ、それも面倒だけど。


頼んでおいた料理を食べ終えた私と大塚さんは準備されていた席に座り直す。


まぁ、日向達がいるテーブル席だが。


椅子が2つだけ増えただけ。



「なんだ、あんたらも何か頼んでたのね。やっぱ、男はケーキだけじゃ膨れないか」



大塚さんはテーブルに置いてあった皿を見て言った。



「いや、お前もなんか食ってただろ」



「バカだね。女子は、甘い物別腹って決まってるの!」



「アホか」



「アホって言うなよ。ある意味本当の話なんだから」



大塚さんはこの人達とも仲がいいらしい。


私はこの人達の名前も知らないのに。


同じクラスだということは覚えているけど。

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