第21話

「学校は楽しいかぁ?ウキウキキャンパスライフだっちゃ。友達は出来たん?あーっ、さっきの坊ちゃんとその隣にいたA子さんは友達だっちゃ?」



「そう思う?」



「思わんなぁ」



でしょうね。


あの人達と友達にはなりたくない。



「いやぁ、スタンガン体験しちゃって可哀想や。周りの子達の中で少々荒々しい輩がいるらしいなぁ。あの坊ちゃん、我慢してるんやなぁ」



「………………我慢とは違うと思うけど」



「ほーう、なーん?なんか思うことあるん?言ってみぃ」



「海だって分かってるでしょうに」



「嬢ちゃんが気付いてるのか心配になるんよぉ」



どんな心配してるのよ。


面倒事に巻き込まれないようにって?



「学校の中にいるかもしれんなぁ。坊ちゃんのストーカーさん。女かもしれんし男かもしれん。坊ちゃんに群がるもんは全部きーつけたほうがええなぁ。あの坊ちゃん、嬢ちゃんみたいにトラブルを惹きつける何かを持ってるタイプやなぁ。黙ってても惹かれるんやろ。なんかの呪いみたいに。こわー」



海の言ってることには賛成できる。


確かに、いつも群がるあの輩の中にいるかもしれない。


ヤバめの奴が。



「ねぇ?」



「なーん?」



「肩どうしたの?」



「ん?」



「庇ってるでしょう」



「………………ホント、よー見とるなぁ。こんなん、気づかなくてええのに。嬢ちゃんは気付くんやなぁ」



気付いたのは運転席に乗ったときだ。


どっかでぶつけた?


それとも、何やらやらかした?



「手当ては?」



「やってもらったっちゃ」



「そう」



なぜ怪我をしたのかは聞かない。


どうせ、教えてくれないもの。


ただ、気付いてますよーっていうサインは出しておかないとね。



「ほんで?学校は楽しいか?」



「そこに戻るの?」



「聞いてないん」



もう、そこに戻らなくてもいいでしょ?


まぁ、別にいいけど。



「楽しいより大変さが強いかもね」



「ほうほう、勉強がかぁ?」



「それもある。あとは人間関係」



「友達いるんやろ?」



「いる」



「なら大丈夫や。いなかったら辛いっちゃ。さっきの坊ちゃんみたいになるんよ?」



「いや、彼に友達がいないって言えないでしょ」



「いるんか?それらしい奴」



「………………」



悩むな。


彼の周りはいつも女が多い。


女が友達………………ではないよなぁ。



「私のことより自分のことを考えてよ」



「俺?」



「お父さんが言ってた。家族のところに帰ろうとしないって」



「うわっ!お喋りさんだっちゃ!」



「お母さんはお盆には無理矢理帰らすって言ってたけど」



「なぁ?嬢ちゃんのママンは表だっちゃ?」



「あなたが言いたいこと分かるけど、お母さんは表です」



何を怖がっているのか。


あっちも息子に会いたいって言っているようだし。


一発二発くらい殴られてもしょうがないと思うけど。



「でも、お母さんが言うことは本気が多いから。ヒモで縛ってあのbarに放り込むかもしれない」



「いや、もうブラックや。俺、嬢ちゃんのママンが一番怖かってん。違う方向の恐怖だっちゃ。表側の恐怖は怖いなぁ。母親って一番強いなぁ」



「で?帰らないの?そんなに嫌なの?」



「………………」



「ねぇ?あなた、凄く運がいいと思うけど、拾った人がお父さんだもん。家の中も綺麗にしてるかもね」



「ホント、意味分からん」



「大丈夫。私も分からない。お父さんしか分からないから」



あそこは柚月とも繋がりがある場所だ。


そこはお父さんもちゃんと考えているだろう。


だから、海が実家に帰っても柚月と会うことはないと思う。


そのうち、無理矢理アパートを解約させて実家に放り込むかもしれない。


お父さんならやりそうだ。



「手に入れたいって思うなら動いてもいいと思うけど、無償で渡すわけじゃないんだし」



「いやぁ、それが怖いなぁ。なーにやらせるん?ってな。大きな声でいらっしゃいませーって言うだけでも恥ずかしくて」



何?


何をしているの?


光さんのお店の手伝いでもしていたの?



「いい勉強になっているようで良かったわね」



「嬢ちゃんもな」



家に着くまでずっと喋っていたが、海は全く疲れていない様子だった。


本当によく喋る。


これ、柚月も同じこと体験していたのよね?



「嬢ちゃん。忘れもんやるけど」



「それは、あなたにあげる。残り物だけど。コンビニよりかなりマシだと思う」



「マジか!?いいん!?」



「うん。食べきれないものは冷凍すればいい。レンジくらいあるでしょ?」



「あるある!マジか!?嬉しいわぁ」



それは良かった。


ニコニコ顔の海の顔は本当に嬉しいということが分かった。



「さよなら。おやすみなさい。あと、ありがとう」



「………………おやすみ。嬢ちゃん」



海は手を振ってから車を走らせた。


さて、早くお風呂に入って寝よ。


話疲れたなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る