第20話

「それにしても、歓迎会かぁ。楽しかったんか?いいなぁ。学生の時の歓迎会と社会人の時の歓迎会は別もんだっちゃ。背負うもんが違うからなぁ。やっぱ、学生はいいなぁ。俺も学生に戻りたいって思うときあるよぉ。戻れんけどねぇ。あっ!ここに来るとき不審者注意の看板あってな。デカデカとあったんよ。今は男でも襲われる世の中だからな。きーつけな。今の男は軟弱もん多いからなぁ。やっぱ、いざというときに動けんとダメだっちゃ」



お前、学生のときがあったのか?


派手に反抗してたのでは?


戻ってどうするの?


やり直したいって?


いや、もう無理だろ。



「いいか?男に襲われたら股間を蹴るのが一番ええぞ。女だったら手加減とか考えちゃ駄目だっちゃ。もしかしたら、スタンガンとか持ってるかもしれんからなぁ。あれは凄く痛いんよ。ビリビリとかのレベルやない。あれは、罰ゲームで体験するもんやないっちゃ」



いや、罰ゲームでスタンガン使ったの?


アホだろ。


あんた、裏にいるんだからその威力がどのくらいなのか分かるでしょ?


いや、そんなことより………………


後ろの人達静かじゃない?


後ろを振り向くと、橋本さんはじーと窓の外を長めその隣にいる女は日向の袖を引っ張りそっぽを向いている日向を振り向かせようとしている。



「足の裏とか凄く痛かったなぁ。痛くて普通に歩けんの。爆笑しちゃってなぁ。クリスマスパーティーだったから変なテンションだったのかもなぁ」



やっぱ、コイツ馬鹿だ。



「アレがどのくらい痛いのか知ってますよ。体験しましたから」



「おっ!坊ちゃん、スタンガンの痛み体験したんか!?」



えっ?


日向は聞いていないのかと思っていたがしっかり聞いていたらしい。


スタンガンを経験したの?


まさか、コイツと同じ馬鹿なことをしたとか?


………………。


いや、そんな馬鹿ではないか。



「中学3回。高校で2回。後ろから抱きつかれたりして」



「………………坊ちゃん。それは完全にヤバイ奴だっちゃ。被害届は出したんか?」



「いいえ」



「出してないんか!?もっと危ないことになるんよ?親にちゃんと言ったんか?」



「言っても意味ないので」



言っても意味がない?


なぜ?


………………。


まさか、親が全く動かないってことに気づいてるとか?


そんな危険なことになっているのに?



「えーーっ!そんなことあったの?凄く怖いじゃん!日向君、大丈夫なの?」



女は私凄く心配してますって感じの声を出す。


それが凄くイラッとした。



「嬢ちゃーん」



分かってる。


やめろって言いたいんでしょ?



「そっかぁ。スタンガン経験したんやなぁ。なら、立派な男だなぁ。5回も体験したんやからなぁ」



何を言っている?


スタンガンを体験したから立派な男って何?


なら、私は立派な女になるのだろうか?


そんなわけないだろ。


海は日向の事情には深く突っ込まずスタンガンの痛みレベルのことを駅に着くまで話をしていた。


私は2人が降りたことで後ろの座る。



「さてさて、次の目的地まで案内お願いなぁ。どこなん?」



「は、はい!えっと、高速道路に近い場所なんです。インターの入り口付近に家が少しだけあるところです」



「あぁ!!そーいえば、家あったな!了解!あそこら辺は街灯少ないやろ?あぶなーな」



場所が分かったことで車を発信させる。



「橋本さん。少し遅くなっちゃってごめんね」



「ううん。大丈夫だよ。電車や歩きで帰るより早いから。助かっちゃったよ」



「そう?なら、いいけど。それと、あの2人の件もごめん」



「それも大丈夫!でも、噂は本当だったんだなって」



「噂?」



「うん。中学校からストーカー被害で悩んでるって話。さっきのスタンガンの件も聞いたことあるよ。日向君と同じ中学の子が言ってたの。後ろから襲われたって。周りに誰かいたからそのまま連れ去ることは出来なかったらしいけど。それが何度かあったって」



「へーぇ」



執着される何かを彼は持っているのだろう。


そういう人はいる。



「怖いよね。そんなこと一回だけでも怖いよ」



まぁ、普通はそうだろうな。


橋本さんの家は本当にインターの近くだった。


家の前に降ろしてそのまま高速道路に乗れるから近くて良かったと思う。


2人だけになって静かになる………………とかは絶対にない。


だって、運転しているのが海なのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る