第13話

お店に着くと真理亜はそんなに洋服が欲しかったのかいろいろ物色していた。


セールと大きく書かれているポップがとても目立つ。


安くなる商品は私も嫌いではない。


だけど、真理亜のように目が本気になることはないかな。


雪は真理亜に似合う服を何点か選んでいたが、真理亜に却下される始末。


なんだろう。


少しだけ自分好みの服装にしようとしていないか?


私の勘違いかもしれないと思ったが、どうやら勘違いではないらしい。


それ、気持ち悪いって思うのは私だけ?


いや、少しならいいかもしれないが………………


限度というものがある。


まさか、下着まで自分の好みにしようと考えてないよね?


………………。


………………。


鳥肌が立ってしまったではないか。



「こっちのスカートがいいよ」



「嫌だ!タイトスカートが欲しいの!」



「えーっ、真理亜にはこっちのプリーツがいいと思うのに」



「だって、持ってないもん。持ってないのが欲しい」



どちらでもいい。


タイトでもプリーツでも履ければいい。


こんなこと言ったら怒られるだろうな。


お母さんの目の前で言ったらもっと怒られる。


まぁ、そんなことしないけど。



「凛ちゃん!どっちがいいかな!?」



「プリーツだよね!?」



「なら、どっちもいらない」



「「それはなし!!」」



仲良しね。


私もその辺を物色してみるが、欲しいと思える服がない。


確かに値札を見れば安いのが分かる。


でも、安いからって欲しいという気分にはならない。



「黒がないなぁ」



「真理亜に黒は似合わないよ」



「出来る女を目指してるの」



はいはい。


ずっと言い合いでもしてなさい。


どちらかが折れるまでずっと続きそうだ。


終わるまで近くのベンチで待っていようと、空いているベンチに座った。


ベンチから座って見ると、真理亜以外のお客さんもよく見える。


みんな、いいものを買おうと真剣な顔で選んでいる。


その中には、そんな服どこで着るのって言いたい服を手に取っている人もいた。


服を見るより人を見るのが面白いなんて………………


私、性格悪いかな。


少し待っていると店の中から雪が出て来た。



「真理亜は?」



「まだ見てる。今回は諦めることにしたぁ」



「そう。今回って………………好きなものを選ばせてあげて。真理亜の楽しみを奪っちゃダメ」



「次回は絶対に引いてあげないからねぇ」



「ねぇ?」



「何?」



「正直、気持ち悪い」



「………………ちょっと、待って。どこまで考えてる?それってどこまで考えてるの!?」



「下着も自分の好みにしようとしないで」



「どこからそんなことになったの!?頭の中で何が起こってるの!?」



「最低」



「やめて!!!真理亜に似合いようなものを選んでるだけなんだけど!」



「やっぱり、真理亜を改造しようとしてる。変態も程々にしないと、警察にご厄介になるから。笑えないからね」



「………………本当に変わってない」



冗談で言っただけなのに。



「全く、馬鹿なこと考えないでよ………………それよりさ、ねぇ?」



その間は何?


………………。



「柚月のことは何も知らない。何度も聞かれても同じこと言うからね。知らないのに何か言えって言われても困る」



「いや、いち君のことじゃないよ」



「違うの?じゃぁ、何?まさか、真理亜の盗撮に協力しろって?死ね」



「違うから!もう、そこから離れて!!なかなか前に進まない………………聞きたいことは海さんのこと」



いや、柚月に関することじゃんか。


本人じゃないけど、彼の側近だった奴のことでしょ?


なんで柚月のこと気になるの?



「何?馬鹿なこと言うならお前の変態を真理亜に言う」



「怖いこと言わないでよ!もう、言いたいことがなかなか言えない。海さんだけど、急に見なくなったから。送り迎えは海さんがずっとしてた。電話だって、いち君が忙しい時は海さんが出てたんだけど。それもなくなったから」



言ってもいいのか。


言わないほうがいいのか。


お父さんから口止めされているわけではないけど。


………………。


消えたってことは、まぁ、ある意味消えたけど。


これは、私だけの問題じゃないし。



「それは、柚月のところからいなくなったってことでしょ。深く考えると裏に行くことになるよ。柚月のことが気になるようだけど、程々にしないとね。深く突っ込んで引き込まれるようなことになっても助けてあげられないから」



「分かってるよ。でも、なんだか………………今のいち君って前より裏らしいっていうか。なんか、言葉にするのが難しい、かな」



電話だけでそれが分かるのか。


雪は他の2人と違って本当に柚月のこと見ていたらしい。



「………………私もよく知らない」



詳しいことは話すわけにはいかない。


雪は表にいるのだから。


関わりを深くすることなどあってはならないのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る